【alterna】
2023/03/10
記事のポイント
- 2023年1月、大阪府と大阪市などが支援して、人工石油の実証実験を行った
- 実験では「人工石油が反応のたびに5~12%増えた」ことが実証されたという
- 開発者の今中忠行・京大名誉教授は、この装置を「永久機関的」と形容した
2023年1月、大阪市や大阪府などが支援して、「水と大気中のCO2などから生成する人工石油」の実証実験があった。この「ドリーム燃料製造装置」を開発したのは、京大名誉教授で立命館大学総合科学技術研究機構・上席研究員の今中忠行氏だ。同氏はオルタナの取材に対して、装置を「永久機関的」だと形容した。(オルタナ編集部)

オルタナ編集部は今回、光山社長と今中氏の双方に取材した。両者の資料などによると、人工石油は大気中のCO2(二酸化炭素)と種油と電力だけで生成されるという。水を特殊な光触媒によってラジカル水にして、そこに種油とCO2を加えることで、人工石油ができるという。
今中氏は「種油が軽油なら人工軽油ができる。種油が灯油なら人工灯油ができる。種油を加えるのは一回目の反応だけで、二回目以降の反応には新しい種油は要らない」とオルタナ編集部に説明した。
特殊な光触媒は二酸化チタン、鉄、プラチナなどでできているという。この光触媒を水にさらし、UVライト(ブラックライト)を当てることで、「ラジカル水」を生成できるという。
■人工石油の生成コストは、軽油の場合1リットル14円
同社の試算によると、種油10リットルとラジカル水8リットルから合成燃料1リットルが生成できる。この過程で種油10リットルがそのまま残るので、次の反応に使い回せる。残りの7リットルは排水される。人工石油の生成量は5~12%で、1回の反応に3~5分程度掛かるという。
人工石油生成装置の特許は今中氏が代表を務めるアイティー技研(滋賀県草津市)が保有しており、実証実験では同社の装置を貸し出した。この装置は、大気中からCO2を取り込む「炭酸固定装置」と、光触媒を使って合成燃料を生成する装置の2つに分かれる。
サステイナブルエネルギー開発の試算によると、人工石油の生成コストは、軽油の場合、1リットル14円となる。内訳は、ポンプやUVライトの電気代、原水の費用、メンテナンス代などだ。種油は使い回せるため、コスト計算に入れていない。
「ドリーム燃料製造装置」で生成した人工石油で発電機を回した場合、発電コストは「1kW時当たり3円」と驚異的に安くなると光山社長は試算する。
サステイナブルエネルギー開発は今後、「ドリーム燃料製造装置」を第三者に月額数十万円でリースし、月産4万3200リットルもの人工石油生成を見込んでいる。リースに出した場合、装置の設置工事費用を加えると、人工石油のコストは「1リットル50円ほど」になるという。
■開発者の今中氏「この装置は永久機関的だ」