瀬戸内の水運3 御領遺跡
井原鉄道の御領駅からは、北・東・南の三方を丘陵に囲まれた平野部が見通せます。家が建ち並ぶそのほぼすべてが西日本最大級の集落跡、御領遺跡です。緩やかな丘陵に囲まれ、高屋川が流れるこの地は、狩猟採集や農耕に最適な環境でした。人々は縄文時代から暮らし始め、今も連綿と続いています。人々が暮らし続けた最大の理由は、この地が水運と陸運の交わる要衝であったことです。
内陸の印象が強い御領ですが、海が遠い存在ではないことは出土品が物語っています。縄文時代の竪穴建物からは香川県産の安山岩の自然石や小片が大量に出土しています。海を越えて届いた原材料をこの地で鏃(やじり)等の製品に加工し、川や陸路を使って内陸へ運んだと考えられています。また、船が描かれた弥生土器は、愛媛県で製作されて運ばれてきたものです。
遺跡の西部で行われた2016(平成28)年の調査では、縄文時代晩期の竪穴建物から注口土器(ちゅうこうどき)が2つ出土しました。西日本では出土例自体が少ない上、時代を特定できる建物跡から発見された貴重な資料です。縄文時代の早い時期から東日本で多く作られていた注口土器には華やかな装飾が施されていますが、御領遺跡の注口土器は極めてシンプルです。様々な文化が融合し、独自の文化に発展したものでしょう。
2020(令和2)年度末で本市の調査は222回を数えます。それでも新しい発見は尽きず遺跡の重要性は増すばかりです。
御領遺跡の注口土器
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