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【NHK政治マガジン】東京へ移る女性その理由は?“地方への潮流”カギは女性に

コロナの影響によってリモートワークなど働き方、そして生活様式が大きく変化してきました。
東京一極集中に徐々に変化が見られ、さらに超高齢少子化時代を本格的に迎える中、今後の地方の生活スタイルがどのように変化するかを人口動態から考察する興味深い内容です。
受動的ではなく積極的に時代の変化に対応し、地方の活性化に結び付けるか、これからの世代の重要な課題だと考えます。


2022年2月25日

【NHK政治マガジン】

東京一極集中を続けてきた日本の潮流の変化を分析する第2弾。
人口データを詳しく見ると、東京都の転出・転入は男女で違いがあることが分かりました。
転入が転出を上回る「転入超過」は、去年、これまでで最も差が縮小したものの、東京の人口は女性によって維持されていたのです。
長引く新型コロナの影響で、生活の拠点に対する人々の価値観も変わりつつあります。
東京に移る女性、その理由は?多様な働き方を実現するにはどうしたらいいのでしょうか。

【リンク】“東京一極集中”に変化の兆し 人口移動データと移住の現場

東京は 男性「転入<転出」 女性「転入>転出」

東京都に入ってきた人数と、出ていった人数の差は去年(2021)一段と縮みました。
総務省の「人口移動報告」によりますと、去年1年間、転入者のほうが転出者より5433人多かったのですが、この「転入超過」は、今の方法で統計を取り始めた2014年以降、最も少ない人数でした。

男女別に詳しく見てみます。

男性は、転入者は22万2220人で、転出者は22万3564人。東京から出て行った人のほうが多く、実は、男性は初めての「転出超過」になりました。一方の女性は入ってきたのが19万7947人だったのに対し、出て行った人は19万1170人。その差は縮まっているものの「転入超過」が続きました。
つまり、東京全体の「転入超過」は、女性によって去年も維持されたと言えます。

女性の転入 20~30代で70%超 “大学進学率が関係”

次に、東京に入ってきた女性たちの年齢層を見ていきます。

20代が52.8%で全体の半数余りに上ったほか、30代が18.8%と、20代・30代で実に70%以上を占める結果となりました。

なぜ、こうした世代の女性たちが東京に多く入ってくるのでしょうか。
人口移動に詳しいニッセイ基礎研究所の天野馨南子さんは、女性の大学進学率の向上が関係していると分析しています。

「女性にとって大学への進学が当たり前となった今、自らのキャリアを大切にしながら生きていきたいと考えている若い女性が非常に増えている。しかし、大学を卒業したばかりの女性が自己実現できるような魅力ある労働市場が地方には少ない。結果、自らのスキルを生かせる選択肢が多く、多様な働き方もできる東京に、20代前半の女性が集まる傾向が続いている。人の移動が減ったコロナ禍ですらその傾向は変わらない」

東京への女性の移動は、1996年に「転出超過」から「転入超過」に変わり、その後も続いています。

上京した女性「地方にはキャリア積める仕事が…」

去年東京に転入してきた女性に話を聞きました。

仙台市出身の大蔵瑞奈さん(23歳)は地元の大学を卒業後、上京しました。高校生を対象とした就職活動のサポート企業で働いています。
ずっと働き続けたいと考え、自分が望むキャリアを積める仕事は東京にあると感じたと言います。

「東京に行きたかったというよりは、やりたい仕事が地方になかったので、地元で就職することは考えず、東京で就職活動をしていました。地元の仙台が大好きでよく帰省しますが、仕事のことを考えると仙台に戻って住む理由は見つかっていません」

どう実現?女性の多様な働き方

一方、女性が多様な働き方をしながらキャリアを積めると評判になっている企業が長野県にあります。

高木奈津子さん(32歳)は、2015年に東京から長野県東部の上田市に単身で移住し、現在、IT関連企業「はたらクリエイト」の共同代表を務めています。

富山市出身の高木さんは、当初は業種や働き方の面で選択肢が少ない地方での就職に魅力を感じず、大学進学にあわせて上京して東京の人材会社に入社しました。

しかし、就職して3年半がたった頃、大きな転機が訪れました。
「女性が活躍しやすい職場や仕組みを作りたい」と、長野県上田市でコワーキングスペースを運営する起業家と出会ったのです。
この起業家が語る、製造業中心の地方ではシフト制で時間の融通が利きにくい職場が多く、キャリアアップを目指す女性のニーズにマッチしてないという問題意識に高木さんも共感します。
人材会社で就労支援を担ってきた経験を生かして、地方から女性の新たな働き方を提示できたらと、単身で上田市に移住することを決断しました。

移住後、高木さんは共同で「はたらクリエイト」を創立し、ウェブサイトのコンテンツ制作や採用業務など幅広く仕事を請け負い、地方にいながら東京と変わらないITスキルを積める職場環境を整えました。
さらに、子育て中の女性でも隙間時間を生かして働けるようフレックスタイム制や在宅勤務制を導入。
必要なスキルを学べる研修制度も設けたことで、未経験でも働きたいという女性たちが集まるようになりました。
創立当時40人だった従業員は、今では130人に拡大し、子育て中の30代を中心に97%を女性が占めています。

「東京と地方の両方を経験したことで自分の道がくっきりと見えてきたと感じています。多様な働き方の選択肢を地方の多くの企業が作ることができれば、地方に居続けたい人も増えてくると思います」

都市部か地方か どちらが理想?

NHKがこの2月に行った世論調査では、住む場所として理想的だと思うのは、都市部か地方か聞きました。
その結果は「都市部」が23%、「地方」が67%でした。
実際には都市部に人口が集まっている一方で、地方に住みたいと考えている人が多いことがわかりました。

“企業はジェンダーバイアス払拭を”

女性が自己実現できる地方であるために、ニッセイ基礎研究所の天野さんは、男女の役割の固定観念=ジェンダーバイアスを払拭する努力が、企業経営者などに求められると指摘します。

(ニッセイ基礎研究所 天野馨南子さん)
「いまだに地方では『この仕事は男性の仕事、この仕事は女性の仕事』といった雇用者側の古い固定観念で、性別による役割分担をしているケースが残っている。男女関係なく多様なライフデザインを組み立てられる労働市場が地方に根づかなければ女性を呼び込むことは難しいし、若い女性がいない地域では男性の未婚率も上がる。そうなれば東京一極集中の流れは続くことになる」

ジェンダーギャップ指数 日本は120位

「世界経済フォーラム」が公表した、男女の格差を測る「ジェンダーギャップ指数」。
去年の日本の順位は156か国中120位でした。
経済分野で▽管理職の女性比率が低いこと、▽女性の平均所得が男性より低いことなどが主な理由です。

全体では東京に入ってくる人が減り、出て行く人が増えているという、長年続く“東京一極集中”に変化の兆しが現れている状況は、地方にとってはチャンスとも言えます。
そんな今だからこそ、女性が働きやすい職場、自己実現できる環境を地方にもっと整備して、社会の前向きな循環につなげていく。
こうした取り組みが、人口移動の“地方への潮流”を本格化させるカギになってくるのではないでしょうか。

解説委員
永野 博孝
1999年入局。函館局を経て経済部。金融や官庁を中心に取材を進める。島根県出身で、趣味は落語。

おはよう日本ディレクター
野澤 咲子
2016年入局。熊本局を経て現職。熊本地震などを取材。落語家の取材をきっかけに落語鑑賞にのめり込む。

長野局記者
牧野 慎太朗
2015年入局。宮崎局を経て現職。長野県庁を担当しコロナや地域交通などを取材。趣味はゴルフとスキー。

経済部記者
峯田 知幸
2009年入局。富山局、名古屋局を経て現職。企業取材や金融・財政取材を担当。幼少期から転勤族。都会も地方も良さがある。

 

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