日本のGDP(国内総生産)は世界第3位の経済大国と言われますが、「一人当たりのGDP」という尺度でみると、2000年の世界第2位から昨年2021年には世界28位までになっています。
1990年のバブル崩壊から30年以上もデフレ経済という異常事態が続く、巷で言われる「失われた30年」の過程で日本経済と科学技術の力は大幅に減退していることが「一人当たりのGDP」に表れていると考えます。
ニッセイ基礎研究所の山下大輔氏は、「5000万人以上の国に限定して比較すれば、世界第6位とまだまだ日本は経済大国だ」と述べられています。(国際的には、一国の経済規模を測る目安は「一人当たりのGDP」というのが常識というふうにいわれています。)
山下氏の言うとおり「まだまだ経済的には豊かで経済大国」と言えるうちに、日本の優位性を生かした強靭な国づくりを進めることが地方地域の活性化の源にもつながる大事なことです。(N)2022.7.25
【ニッセイ基礎研究所 山下 大輔氏】
2021年5月6日
日本の名目GDPは世界第3位
日本の国内総生産(GDP)は世界第何位かと問われれば、世界第3位とすぐに答えられる人が多いと思います。GDPは一定期間に国内で生み出された付加価値(中間投入物を除いた生産額)の合計であり、生み出された付加価値は分配されて所得になるので、国の経済規模や国の豊かさを表す指標といえます。実際、国際通貨基金(IMF)のデータベース(※1)によれば、為替レート(米ドル)で換算した日本の名目GDPの規模は、2010年に中国に追い抜かれて以降、米国、中国に次ぐ第3位です。
国ごとの物価の差を調整すると
ところで、上述のGDPは為替レート(米ドル)で換算されたものですが、国際比較のためには、国ごとの物価の違いを考慮した方が望ましいかもしれません。GDPが同じでも、物価の高い国より物価の低い国のほうが、実質的な生産額や所得額は大きいといえるからです。国ごとの物価の違いが為替レートには反映されていないかもしれません。そこで、IMFの同じデータベースを用いて、国ごとの物価の違いを示す購買力平価(※2)でGDPを換算すると、日本は、2009年にインドに抜かれて以降、中国、米国、インドに次ぐ世界第4位となっています。
国の平均的な豊かさを表す一人当たりGDP
GDPは、国内での一人ひとりの経済活動の産物ですので、人口の多さに影響されるかもしれません。そのため、平均的な豊かさを示す指標としてはGDPを人口で割った「一人当たりGDP」がよく用いられます。IMFの同じデータベースによれば、2020年の日本の一人当たりGDP(※3)は、購買力平価換算で世界第30位でした。GDPの順位と大きな差があります。GDPを一人当たりGDPと人口の掛け算と捉えれば、日本のGDPは人口で大きくなっているのでしょうか。
日本はそれほど豊かではない?
実は、一人当たりGDPのランキングの上位にルクセンブルクやシンガポールなど、人口の少ない国が多く含まれています。小国の特殊要因が影響している可能性もあります(※4)。実際、人口が5,000万人以上の国で比較すれば、日本の一人当たりGDPは、購買力平価換算では世界第6位となり、GDPの順位との乖離は小さくなります。そう考えると、世界第3位であるかはともかくも、日本は依然として世界で有数の豊かな国であるといえそうです。
(ニッセイ基礎研究所 山下 大輔)
筆者紹介
山下 大輔(やました だいすけ)
株式会社ニッセイ基礎研究所、経済研究部 准主任研究員
研究・専門分野:日本経済
https://www.nli-research.co.jp/topics_detail2/id=65148?site=nli