【備後とことこ】
伝えとこ / 2022.08.23
子どもと仕事や地域の関わりについて、次のようなことを考えたことはありませんか。
- 子どもの成長過程で、どのような仕事に出会えば、積極的に自身の未来像を描き、学習意欲に結びつけられるか
- 地域での体験(大人との交流)が、子どもの将来を決める指針になるとしたら、親としてできることはあるか
そうした親世代の子育てにからむ気掛かりに応えてくれるイベントが、このたび開催されました。
近年、重要性が高まるキャリア教育の実践の一例、福山市での取り組みを取材したレポートです。
記載されている内容は、2022年8月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
子ども未来フェス in 福山とは?
2022年8月11日(木・祝)、第2回 子ども未来フェス in 福山が、まなびの館ローズコム4階会議室で開催されました。
主催は福山市のボランティア団体、福山はぐくみ研究会(代表:喜田紘平)、後援は福山市ならびに福山市教育委員会です。
子ども未来フェス in 福山は、子どもたちが自らの職業・社会活動の疑似体験を通じて、楽しみながら仕事の仕組みや経済の流れを学ぶイベント。
それぞれのブースで与えられた体験ミッションをクリアすると、その対価として当日限定の通貨「ダイ」が支給され、会場内の小売りショップで買い物ができます。
同フェスの特徴のひとつは、趣旨に賛同した企業が運営に協力している点で、それぞれの持ち味を活かしながら、子どもたちの興味を引く職業体験を提供していました。
◆体験ブース(A~L)とその内容
- A.「小さな看護師さん」命をささえる病院のお仕事。聴診器で心音を聴いて、怪我の手当てや注射を打ったりします。
- B.「子ども薬局」出展中止
- C.「介護のお仕事」出展中止
- D.「助産師」妊婦と胎児の診察などの体験。産院、助産院、ネウボラ、国際協力のなかから活躍の舞台を選べます。
- E.「警備員」当日のイベントで警備スタッフの体験をします。混雑状況や人の流れを観察して安全を確保。
- F.「子ども電気工事やさん」配管や配線の工事を行い、指示通りに成功するとランプか点灯。マンツーマンの指導有り。
- G.「アクアクララカフェ」配達先と数量の連絡を受けて、笑顔でお水を宅配します。
- H.「塗装のお仕事」約1メートルの家の白壁に、噴霧ガンで吹きつけ塗装します。好みの色を混ぜて作る調色体験も。
- I.「カフェ店員」注文を正しく聞いて、商品を運びます。笑顔の接客を心がけましょう。
- J.「景品ショップ」当日発行の通貨で商品を販売する店員のお仕事。商品の陳列や看板の製作にも挑戦。
- K.「裁判所」実際の裁判さながらに裁判官、検察官、弁護士に扮して行う模擬裁判。3名の現役弁護士が立ち会います。
- L.「建築(設計)」住みたい理想の家を具体プランに起こします。頭の中のイメージから図面やコンセプトを描く作業です。
昨年(2021年)に続く今回の開催は、前回同様、参加を望む声はかなり多く、小学生80名の枠に約1,700名の応募が寄せられました。
本イベントの趣旨として「キャリア教育」と明確にはうたっていませんが、反響の大きさから、そうした教育効果への期待のほどがうかがえます。
同時に福山市内において、小学生に向けたキャリア教育の不足をあらわにしたのではないでしょうか。
「未来フェス」をキャリア教育の視点で考える
キャリア教育とは、いったいどのような教育なのでしょうか?
引き続きイベント当日の模様をプレイバックしながら、考えたいと思います。
文部科学省は、「一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義。
キャリア教育とは、「職業的自立」と「社会的自立」を支援する、つまり生きる力を促す教育です。
ふたつの自立は、それぞれ以下のように説明できます。
- 社会的自立とは、「自分の個性を理解し、主体的に進路を選択すること」
- 職業的自立とは、「勤労観・職業観をもって働くこと」
またキャリアは、「『働くこと』を通して人や社会に関わることになり、その関わり方の違いが『自分らしい生き方』となっていく」と補足しています。
上記の社会的・職業的自立を促す教育により、子どもたちが学び続けたい、働き続けたいという意志を持ち、またそれを実現できる力を得ることが「キャリア教育」の大きな目標です。
それではキャリア教育が、とくに今の時代に、必要とされるのはなぜでしょうか?
その背景的な2つの特徴に理由はあります。
まず1つ目は、社会状況によるもの。
急激に変化する社会において、働くことに対するイメージや、将来のビジョンが描きにくくなってきている。
2つ目の理由は、子どもの発達状況によるもの。
精神的・社会的な自立が遅延傾向にあり、人間関係の構築や意思決定、自己肯定感の獲得に困難をかかえた子どもが増加している。
現状を知れば、親子間の感覚の違いに気づき、それに適ったキャリア教育のあり方に向き合えるのではないでしょうか。
小学生のキャリア教育はまだ早いのでは?という意見もあります。
前提として、小学生のキャリア教育は、具体的な仕事に直結する知識や技能を習得する職業教育ではないということです。
つまり小学生の発達段階では、未来を切り開いていく意志や姿勢、働くことはどういうことかという意識を芽生えさせ、高めていくことが教育の目標とされています。
福山はぐくみ研究会の考える「未来フェス」効果
郷里を出て進学した子どもたちが、就職先を選ぶ際に、地元企業で働く動機につながってくれればうれしい。
福山はぐくみ研究会の代表、喜田紘平(きだ こうへい)さんはそう言います。
確かに福山市の企業と何らかの接点があれば、自分の能力を活かそうとする気持ちが地元に向かう契機になりそうです。
しかし地元に進路を開いていける十分な土壌があるのに、地方だからという先入観を超える印象をそこに持てなければ、人材の喪失になりかねません。
喜田さん率いる福山はぐくみ研究所はこれまで、学習支援やこども食堂、教育フォーラムなどの活動を続けてきました。
そうしたなかで職業体験の必要性を感じ、模索の末に「子ども未来フェス in 福山」の実現にこぎつけたのです。
第1回目の開催までは、想像を超えるゼロイチの壁に悩まされたのですが、今回は比較的スムーズに実行に移すことができたそう。
新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策は、職業体験を制限する不利な条件になりますが、イベントの運営スキルは向上しています。
参加希望者の多さから、継続的な開催に意義のある「子ども未来フェス in 福山」。
次回以降の開催でも、期待を上回る福山ならではの職業体験を提供してくれることでしょう。
おわりに
お仕事体験が一堂に会する「子ども未来フェス in 福山」の2回目。
その道のプロの的確なアドバイスはもちろん、手馴れた動作が子どもたちにとって、なによりの教材ということがわかりました。
学ぶことの根本には、その語源でもある「まねび(真似び)」があります。
言語化するとかなり複雑な仕事を直感的に体得できるのは、子どものみずみずしい感性が発動するまねびによるもの。
小学生の職業体験が、広く求められる理由の一端を目の当たりにしました。
第2回 子ども未来フェス in 福山のデータ
名前 | 第2回 子ども未来フェス in 福山 |
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期日 | 2022年8月11日(木)午後1時~午後5時 |
場所 | 広島県福山市霞町1-10-1 |
参加費用(税込) | 無料 |
ホームページ | NPO 福山はぐくみ研究会 |
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