【gendai.media】
2023.04.03
人間は本当に生物界の頂点か⁉ 生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている!
NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。
書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』では、40億年前に誕生し、今も進化を続ける「微生物」の秘密を明らかにしていく。
人の体で暮らす微生物は約100兆で、人の細胞のおよそ37兆より圧倒的に多い。太古の祖先による海から陸上への進出も、腸内に微生物がいたことで果たせた可能性がある。また空中では、植物だけでなく、光合成の50%を微生物が担っているという驚きの事実も判明。今、環境問題や宇宙進出でも微生物は欠かせない存在だ。
今回は、フランスのスタートアップ企業を取材。プラスチック問題に微生物の驚異の能力が、決定的な解決策になる可能性が大きいとわかってきた。
前半記事<がんを“狙い撃ち”する微生物を複数発見! その「スーパーパワー」で腫瘍が消えるなど劇的な効果も…!!>はこちらから。
海にはジャンボジェット機5万機分のプラスチックが!
微生物たちのパワーは、環境問題の解決にも役立つのではないかと期待が高まっている。
ペットボトル、ビニール袋、発泡スチロールなどの梱包、緩衝材など幅広い用途で使われているプラスチック。その多くは使い捨てされ、適切に処理されないまま環境中に流出し、河川などを通じて海に流れこんでいる。その量は世界で年間約800万トンにおよぶと推計されている。重さにしてジャンボジェット機5万機分にも相当する量だ。2050年には海にいるすべての魚の重量を合わせたよりもプラスチックの重量のほうが重くなるとも言われる。
波や紫外線の作用で数ミリ程度に細かく断片化されたプラスチックが、マイクロプラスチックだ。マイクロプラスチックは環境中で自然に分解されることがない。海のプランクトンなど小さな生物がマイクロプラスチックを取りこむだけでなく、食物連鎖により魚、海鳥、そして私たち人間も取りこみ、少しずつ体内に蓄積されつつあると見られている。
しかし、プラスチック分解菌がこの問題を解決してくれるかもしれない。フランスのスタートアップ企業のカルビオス社は2020年4月、イギリスの科学誌『ネイチャー』に、この菌が作った酵素により、ペットボトルなどに使われるポリエチレンテレフタラート(PET)をリサイクル可能な状態まで短時間で分解する技術を開発したと発表した。
カルビオス社の技術で、私たちに身近なペットボトルの材料であるPET1トンの90%を10時間以内に分解し、
リサイクルできる状態にするという。(c)NHK
1トンものPETの90%を10時間以内に分解し、リサイクルできる状態にしたという。