【読売新聞】
2023/06/12
歩行者が横断歩道を渡ろうとしている際に車のドライバーが一時停止をしない「横断歩行者妨害」の摘発件数が昨年、岡山県内で過去最多の8042件にのぼった。県内では一時不停止の車両の多さも課題となっており、岡山県警は啓発と取り締まりを強化している。(岡さくら)
道路交通法は、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合、ドライバーには一時停止を義務づけている。違反すれば横断歩行者妨害として、違反点数2点と普通車であれば反則金9000円が科される。
岡山県警交通企画課によると、摘発件数は2018年には282件だったが、年々増加を続け、昨年にはおよそ30倍近くの8042件となった。交差点や横断歩道近くでの取り締まりを重点的に行ったためだという。
そもそもこうした地点での取り締まりを強化した背景には、岡山県内のドライバーの一時停止率の低さがあった。日本自動車連盟(JAF)による18年からの調査で、県内の一時停止率は同年に10・8%、20年は7・1%と低調が続き、21年は10・3%で全国平均(30・6%)を大きく下回り全国ワーストとなっていた。
このため岡山県警は、重点的な取り締まりを行うと同時に、各署が通学路や交通量の多い場所を「モデル横断歩道」と位置付け、署員やボランティアが通学時間帯などに横断歩道に立ってドライバーに一時停止を促してきた。
一方、県警によると、ドライバーが一時停止しない理由として「横断するかどうかが分からない」との声が根強いという。このため歩行者に対しても交通安全教室の場などで、横断歩道を渡る際には手を挙げたり、ドライバーに対してアイコンタクトを送ったりするよう呼びかけている。
一定の成果につながっており、昨年の一時停止率は49%まで上昇し、全国平均(39・8%)を上回った。ただ、こうした中で横断歩行者妨害の摘発は相次いでおり、横断中の事故も依然として後を絶たない。昨年1年の交通事故の死者74人のうち、15人が横断中の事故だった。
黒藪昌史・交通企画課次長は「歩行者妨害は信号無視と同様の悪質性がある。運転手の意識付けをさらに進めていきたい」と話している。