【毎日新聞】
2023/9/26
広島県福山市の花「バラ」の剪定(せんてい)枝を材料にデニムを製造する「ばらデニム」プロジェクトが始まった。廃棄物を活用して新たな製品を作る「アップサイクル」の試み。地域の花壇の手入れで出る枝を寄せてもらい、市内のデニム関連業者が協力して2023年度内にジーンズの試作品完成を目指す。【関東晋慈】
「福山らしく地域創生」
サトウキビの搾りかすを使ったジーンズ製造の実績があるコンサルティング会社「リノベーション」(東京都)のノウハウを活用し、市内の7社が製造を担う。
製造工程は▽枝を粉末状になるまで細かく砕く▽粉末を紙に加工▽紙をより合わせて糸をつくる▽糸を使ってデニム生地を織る――と進む。横糸の20~30%をバラの枝由来の糸が占め、ジーンズ全体で200~300グラム(10~15%)を使うことになるという。
材料のバラの枝は、市が7月に実施したばら公園(花園町)のリニューアル工事で出た約1トンを確保。さらに市民に呼びかけたところ、約30の個人・団体から300キロ以上が集まった。
市民が誇る「デニム生産量日本一」とまちのシンボル「バラ」のコラボに期待は大きく、若松町内会の小寺康之さん(68)は「バラがデニムになると声をかけ、久しぶりに子供会が集まって枝切りをした。今回のプロジェクトを機に地域のつながりとバラに込められた平和への思いをつないでいきたい」と話す。
プロジェクトを主催するリノベーション社の富井岳さん(31)も「バラのアップサイクル(創造的再利用)による世界初の『ばらデニム』ができる。福山らしい地域創生につなげたい」と語る。
プロジェクトで完成したジーンズは2025年5月に開かれる「世界バラ会議福山大会」での利用を検討するという。