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ノーラン・チャートとリバタリアニズム/右派左派とはそもそも何か考える(2023.10.18)***

ノーラン・チャート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
近年の日本においては、左上はリベラル・左下はファシズム・右上は新自由主義・右下は保守などとも呼ばれる[1]

ノーラン・チャート英語Nolan Chart)とは、アメリカのリバタリアン党の創設者でも有名なデイヴィッド・ノーランによって広められた政治思想の概念図である。ノーランはリバタリアニズムを経済的自由と個人的自由の両方を支持するものとして定義し、彼によれば、個人的自由のみを擁護する左翼リベラルと、経済的自由のみを擁護する右翼保守とを対比させることにより図式化した。

ノーラン・チャートには、右翼と左翼という伝統的な政治分類とは異なり、経済的自由を表すX軸と個人的自由を表すY軸とがある。ノーランは左下の領域に位置する政治哲学をポピュリズムと呼んだが、多くの人々は代わりに権威主義あるいは全体主義と呼んだ。

リバタリアニズム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

リベラリズム」とは異なります。

リバタリアニズムlibertarianism)は、個人的な自由経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想政治哲学の立場である[1][2]。経済的な自由を重視する新自由主義と似ているが、リバタリアニズムでは個人的な自由をも重んじる[3]。他者の身体や正当に所有された物質的、私的財産を侵害しない限り、各人が望む全ての行動は基本的に自由であると主張する[4]。リバタリアニズムを主張する者はリバタリアンと呼ばれる。日本語では完全自由主義自由人主義自由至上主義自由意志主義などの訳語がある。

なお、哲学神学形而上学においては決定論に対して、自由意志と決定論が両立しないことを認めつつ(非両立説 incompatibilism)、非決定論から自由意志の存在を唱える立場を指す[5]。この意味では自由意志論などと訳される場合が多い。



【note】リバタリアニズムは右翼か左翼か:右派左派とはそもそも何か考える

リバタリアン協会(LS)

(文:中条やばみ)

目次

はじめに

 そもそもの前提として「リバタリアンは右翼か左翼か」という問いはあまり意味がないのかもしれない(というより、ない)。なぜなら、個々人の考えは多種多様であるため、数直線上で表せないだろうから。

 著名なリバタリアンである森村進氏も「伝統的な(とはいえ、フランス革命以降の)『左翼ー右翼』という政治思想の分類自体が不十分なものだということがわかる。」「左翼とも右翼とも違って、首尾一貫した立場であり、『左翼ー右翼』の線上のどこにも位置しないのである。」⑴と述べている。しかも,リバタリアニズム内部においても(主張の根拠/許容する国家の規模)により様々だから、なおさら左右に還元し得ない。

 しかし、現実のメディアでは「左ー右」の単純化された分類が一般的である。ささやかな抵抗として、電子の海にノーラン・チャートを反復させるのも悪くないだろう。加えて、自身がリバタリアンだと考えている人で、「極左だ」「極右だ」と言われたことがある人もいるだろうから(私である)、そういった人の考えを整理するのにも役立つかもしれない。さまざまな分類法に光を当てながら見ていこう

ノーラン・チャート

画像
ノーラン・チャート

 ノーラン・チャートは、「リバタリアン党の創設者でも有名なデイヴィッド・ノーランによって広められた政治思想の概念図である」⑵、右図⑶。 政治関連の書物やリバタリアニズム入門書,山猫総合研究所(https://yamaneko.co.jp/diagnosis/。三浦瑠麗氏による価値観診断)等で見たことがある方も多いと思う。

 この図によれば(個人的自由,経済的自由)により分類され、

リバタリアン(高,高)

保守    (低,高)

リベラル  (高,低)

権威主義  (低,低)

中道    (中,中)

といった感じである。わかりやすい。

主意主義・主知主義・(主情主義)

 加速主義者を自称する社会学者、宮台真司氏による(独自の?)分類で、主意主義=右、主知主義=左とする分類がある。この分類は哲学的であり、個人(例えば政治家)の理念に関わる。

 ウィキペディアによれば,主意主義は「人間の精神(魂)の中で、意志の働きを(知性・理性な感情よりも)重視する」立場で、主知主義は「知性・理性の働きを(意志や感情よりも)重視する」立場である⑷⑸。

 このままだとイメージしにくいので、分類した本人の説明を引用する。

 「人は、理不尽や不条理を前に、超越的なもの (絶対的な神や、神格化された人間や、不変の真理や、巨大な国家) に依存しがちです。これに対し、神や神格的人間や真理や国家に依存するのでなく、『理不尽や不条理に身を晒しつつ前進する理解を越えた存在』 を肯定するのが、真の右翼です。難しく言うと、主知主義が左翼で、主意主義が右翼です。」⑹

「左=主知主義は『システムがちゃんとすれば』『制度がちゃんとすれば』『社会がちゃんとすれば』人は幸せになるっていう条件プログラム=if-then文で、真なる if-then 文を集めるのが幸せへの道だというのに対し、右=主意主義は、『社会がちゃんとしても』人は幸せになるとは限らないどころか、社会に依存すれば幸せになれないとするからです。」⑺

 この点において、自由意志を重視するリバタリアニズムの特徴がはっきりと浮かび上がる。ハードリバタリアンが政府の干渉を嫌い、福祉は政府がするよりも個人の自発的な贈与に基づくのが良いと考え、対抗言論を含む表現の自由を高らかに擁護し、パターナリスティックな規制の撤廃を求めるのは、まさにこのためであろう。極めて実存主義的である。

 この分類に従えば、リバタリアンは右派ということになりそうである。リバタリアンの中でもハードリバタリアンのマインドも見えてきた気がしてくる。

保守・革新

 現代の日本では全く意味をなさなくなった対立軸。

 日本の政治家は「良きところは守り、時代に合わなくなったものは変える」という趣旨のことをよくいう。「維新は改革保守」という造語も生まれた。「自民党は革新で、共産党が保守のように見える」と言われたりもする(これについては疑問だが)。

 政治学者である片山杜秀氏はそれを嘆き右派(過去が理想)←保守(現在にある程度満足、ゆっくり改革)→左派(未だかつて来たことのない理想社会)という分類をした(らしい)。

 私見だが、上の分類で、保守をさらに分解し、保守(現在にある程度満足)、改革(ゆっくり改革)と分ければ、現状を説明し得るかもしれない。これによれば、自民党は右派から改革、共産党は左派、立憲は改革、維新は右派から左派をカバーしていると言えそうである。

 この分類に従えば、穏健リバタリアンは改革から左派で、普通のリバタリアンやハードリバタリアンは左派になるだろう。

 穏健派が望むのは、同性婚、夫婦別姓、人工妊娠中絶の権利、減税、規制緩和などだから、国民の何分の1か(特に若者)はリバタリアン的な傾向を持つかもしれない。近年見られる心の温いリバタリアン(Neoclassical liberalism)もここに含まれよう(https://libertarianism.jp/neoclassical-liberalism/ も参考のこと)。

 ハードリバタリアンが求めるほど小さな(もしくは無)政府はかつてない理想社会である。

左翼・右翼

 ノーラン・チャートを見ていただければ分かるように、右翼とされるナチスも左翼とされる中国共産党も、リバタリアンにとっては等しく権威主義的、中央集権的であって好ましくない。

 自発的な行動を重視するリバタリアンは、起業家精神、自律分散、任意の交換を賞賛する傾向にあり、起業家や情報分野、社会的寛容(法の下の平等、大麻、売春)に親和性が高いのも納得がいく。ーーー前者は節税のためにレッドステイトに会社を引っ越したりしているようです。大麻や売春に寛容なオランダやアメリカのブルーステイトは社会的寛容を備えていそうです。

 またそれは反権力に結びつき、IT企業、グローバル、暗号通貨、などのように技術発展や情勢変化による社会変革を望むクリプトアナキズムや加速主義とも親和性が高い。ーーーこの種のリバタリアンは(私の独断と偏見に基けば)トランプ支持者が多いように思います。ピーター・ティール、宮台真司などです。

 社会的寛容・反権力の点で「いわゆる左派的」だと思われる。かつて立憲民主党から出馬した亀石倫子氏は、リバタリアンのそれに近い。氏は、大阪府GPS捜査違法事件、風営法ダンス営業規制違反被告事件、タトゥー彫師医師法被告事件などの超有名事件を担当した超凄腕弁護士である。刑事手続改革、再審請求、大麻使用罪創設反対、#セックスワークにも給付金を等の活動を現在もしている。個人的に応援しているので宣伝。

 人間の理性の絶対性に懐疑的なリバタリアン(特にハイエク)は、自生的秩序を重要視する。ノージックやロスバードの想像する自然状態では共同体が必要になるだろう。この点で「いわゆる右派的」である。日本では特に橋下徹氏や音喜多駿氏がリバタリアン的だと言われるが、ここでは保留したい。橋下氏のいう戸籍制度の廃止、地方分権、規制緩和、一夫一妻制の緩和、グローバル化、教育バウチャー、民事連帯契約、等はリバタリアン的である。初期には、最低賃金の廃止、相続税100%と低率の贈与税(森村的税制⑻)も主張していた。一方で、国歌斉唱条例。

おわりに

 これからも、リバタリアニズムの認知のために定期的に文章を書いていきたい。

参考

⑴森村進,『自由はどこまで可能か』(講談社現代新書,2001),16頁 13-16行.

⑵Wikipedia.“ノーラン・チャート”.2021.https://ja.wikipedia.org/wiki/ノーラン・チャート,(参考 2022-04-23).

⑶wikipedia.“Nolan Chart”.2022.https://en.wikipedia.org/wiki/Nolan_Chart,(参考 2022-04-24).

⑷Wikipedia.“主知主義”.2022.https://ja.wikipedia.org/wiki/主知主義,(参考 2022-04-24).

⑸Wikipedia.“主意主義”.2022.https://ja.wikipedia.org/wiki/主意主義,(参考 2022-04-24).

⑹B-plus.“今“かっこいい”ビジネスパーソンとは 第3回 引き受ける力”. https://www.business-plus.net/business/1004/114601.shtml,(参考 2022-04-24).見出し(例え日本が沈んでも意気消沈する必要はない)13-16行.

⑺News Picks.“【宮台真司】閉塞した社会で「幸福」を思考する(前編)”.https://newspicks.com/news/5463386/body/,(参考 2022-04-24).見出し(「主知主義 vs. 主意主義」の対立が続いた理由)9-15行.

⑻森村進,“リバタリアンな相続税”,『一橋法学』(一橋大学法学研究科)第6巻第3号2007年11月 ISSN 1347-0338.http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/15131/hogaku0060300390.pdf,(参考 2022-04-24).

筆者紹介

中条やばみ。大学院生。


 

 

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