神を守護する 吉備津神社狛犬
吉備津神社の狛犬3躯は、平安時代後期に造られた、備後地域を代表する守護獣像です。像高は約80センチ、背をやや湾曲させながら前足を前方につき、後ろ足を畳んで座っています。眉弓は高く盛り上がり、眼は爛々と見開かれ、鼻は鼻柱が太く大振りです。開口した阿形は伏せ耳でたてがみは直毛、閉口した吽形は立て耳でたてがみを巻毛で表しています。
姿形だけではなく、色彩も対照的です。阿形は胸前に僅かに金箔の痕跡があり、本来、体は金箔に覆われ、体毛は緑青の彩色が施されていました。吽形は銀色に輝く肉身部に、体毛は群青の彩色でした。邪を祓う守護獣にふさわしい、鮮やかな色彩を持つきらびやかな姿でした。
私たちが普段目にする狛犬は石造ですが、この狛犬は本殿に安置されるため木造です。現在の本殿の内々陣は3間あり、大吉備津彦命を主祭神とする神々が安置され、その両端の脇陣に狛犬の座が設けられています。
なぜ狛犬が3躯あるのかは、鎌倉時代の一遍上人絵伝にヒントがあります。絵伝には本殿の左右にも社殿が描かれており、この3つの社殿それぞれに神と狛犬が安置されていたとすると、狛犬は3対あったと考えられます。その後、火災などを受け再建された現在の本殿に神々を集約して奉安していますが、1対を超える狛犬が現存していることが、3つの社殿が存在した可能性を高めます。
普段は国の重要部文化財として東京国立博物館に所蔵されていますが、10月にふくやま美術館で里帰り展示されます。
吉備津神社狛犬
吉備津神社本殿
このページに関するお問い合わせ先
文化振興課
084-928-1278