農家にも大きな影響?インボイス制度と農業
来年2023年10月から始まる「インボイス制度」ですが、この制度は新たな記載義務のインボイス登録事業者の登録番号を記載された請求書を使って消費税を計算して納税しましょうというものです。
このインボイス制度が始まることによって、これまで年間1000万円以下の売り上げの零細免税事業者に大きな影響を与えることが予想されています。
特に農家の方々の多くは免税事業者であり、インボイス制度を導入することによって、これまで取引をおこなっていた地元スーパーその他事業者との取引を継続することが出来なくなる可能性があります。
小規模な農家の出荷先・販路は大きく分けて以下の
①JA出荷
②民間企業(スーパーなど)への出荷
③通販サイトを利用した通信販売
④近隣地元の「道の駅」などの直売所へ委託販売
この中でJAを通じた出荷については、JA特例という制度があるためこれまでと大きく変わりません。
問題は①のJA以外をメインとしている農家となります。
インボイス制度が中小零細農家(農家だけではない全産業の中小零細事業者)にどのような影響を及ぼすのか?分かりやすく解説されている以下の「ZEIMO」の記事を掲載しました。
(N)2022.8.5
以下ZEIMOより引用
【ZEIMO】
[公開日] 2019年2月14日 [更新日]
インボイス制度が農業に与える影響は、
(1)零細農家が排除される可能性
取引先からすると零細農家からの仕入には仕入税額控除が適用できないため、その分消費税の負担が増大することになります。
(2)中小農業法人の経費が増える
中小の農業法人は近隣の零細農家から農作物を仕入れざるを得ないという現状があります。
免税事業者である零細農家からの仕入れは仕入税額控除が適用できないため、中小農業法人の消費税の負担が増大することは間違いありません。
(3)零細中間業者の淘汰
直売店のメイン顧客は一般消費者であるためインボイスの心配はあまり無いように感じるかもしれませんが、課税事業者である飲食店が仕入に利用することも想定されるため、やはりインボイスの影響は免れません。
ここで懸念されるのが、現在の中間業者のレジシステムでは、インボイス制度に対応できないという点です。
(4)自給率の低い日本は農作物に限らず、中小零細の生産者の事業と生活を圧迫する。
(以上、一部「ZEIMO(税金とライフマネーの総合サイト記事より)」
https://zeimo.jp/article/18634
(N)2022.7.22)
このインボイスという制度の中で零細事業者が生き残っていくためには、早い話「インボイス登録事業者になり売上を上げる」ということになります。
しかしその要求されるハードルを越えることのできる零細事業者は、決して多くはないだろうと思われます。
特に粗利が少ない農産品の販売に関しては、少しの税負担の変動で商取引の舞台から退場を余儀なくされるケースが他の業界より多いと感じます。
日本の地方地域を支えているあらゆる事業の中小零細事業者は、インボイス制度が始まることによってこれまでにない大きな負担を強いられることになると思われます。現実問題として継続できそうになければ、あっさりと事業を廃業し別の生き方を選択できる人たちばかりではありません。中小零細農業事業者に税負担を強いることは日本社会を形成している地方地域とコミュニティーを破壊することにもつながりかねません。
特に農業・漁業(一次産業)は日本人の「食」と地方地域を支える大きな役割を担っています。
税は公平に負担することで社会を支える基礎になりますが、「公平」という基準をどこに設定するかで市民の生活は大きく変化します。
国と企業それに関わる従事者そして社会の発展と、地方地域社会の発展はパラレルアクションで進められるべきと考えます。
これからの日本全体と地方地域社会をより良くするための制度改革を望みたいと思います。
インボイス制度については、引き続きウォッチして関連情報の掲載をしていきたいと思います。(N)2022.7.22)