【中国新聞】
広島県福山市御門町の作詞家助田ひさおさん(89)が作った「春蝉(はるせみ)」が、日本音楽著作家連合(東京)が主催する歌謡作品コンクールで最優秀賞に輝いた。来年5月、キングレコード(同)からCDが発売される予定。「たくさんの人に歌ってほしい」と願う。
「別れ言葉もないままに 何処へ消えたか一夜草(ひとよぐさ)」―。詞では、はかない男女の関係を命が短いセミに重ね合わせて言葉を紡いだ。中盤では「なけば倖せきっと来る」と歌い、苦労の先にある希望を表現した。
作家、藤沢周平の「蟬(せみ)しぐれ」で描かれた切ない恋模様から着想を得た。「曲を通して、辛いことがあっても良いことがあると伝えたい」と助田さん。コンクールには全国から約700件の応募があり初挑戦で最高評価を得た。12月まで曲を募集し、来年2月頃にCDの制作が始まるという。
助田さんは歌手として活動していた妻の影響で歌に興味を持ち、60代で作詞を始めた。自身を「物事をロマンチックに考える性質」と話す。自身が手がけた曲が店で流れているのを聞いたり、人が口ずさんだりしているのを見たりするとやりがいを感じる。
71歳でプロの作詞家になり約100曲を送り出してきた。「結果が出て、やっと一人前になれた気持ち。命のある限り詞を作り続けたい」
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