【ベストカー】
2022年11月24日
「走行距離税」に対して、2022年11月17日に実施された記者会見にて、日本自動車工業会が異例の強い言葉で反論した。EVを含む電動車の普及により燃料税収が減少するなかで、将来の自動車関連税制をどうしてゆくかの議論が進んでいる。そうした状況で、「安易な走行距離への課税は断固反対」とする自工会の意見と立場を改めて明言したかたちだ。豊田章男会長による「ただ減らしてくれと言っているわけではない」という興味深い発言もあったので、そちらも合わせてご紹介いたします。
文/ベストカーWeb編集部、画像/日本自動車工業会
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■「ただ【高いから減らしてくれ】と言っているわけではない」
「自工会としては、大変問題があると考えています」
2022年11月17日に開催された自工会の会見で、記者から「走行距離税をどう思うか」という質問に対して、永塚誠一自工会副会長は強い口調でそう答えた。
いま議論となっている「走行距離税」とは、今年10月に実施された税制調査会(首相の諮問機関)で議題に上がった新たな税制度。事務局である財務省担当者から、「(自動車に関する)新しい税の在り方を議論したい」という呼びかけがあった。財務省が、自動車関連諸税の見直し、もっとストレートにいえば「走行距離税」の導入を狙っている。それはこの15年間(2007年度比)で約1兆円減った燃料課税の穴埋めと、増加する道路やトンネルの補修にかかわる維持費を確保したいという思いがある。
政府(財務省)の思惑としては、将来的にEVやFCEVが主流になると揮発油税や軽油引取税が激減することになり、その代わりに走行距離に応じた「走行距離税」を導入したいということだ。
この動きに対して、本稿冒頭のように自工会は強い言葉で反論した。
「まず現在は、政策的に電動車の普及促進を図る時期であり、新たな課税はそれにブレーキをかけることになります。
また、走行距離に応じた税負担は、地方にお住まいの方、物流事業者の皆さんに大きな負担がかかる制度です。特に地方にお住まいの方々は、生活の足として、たとえば通勤や通学に自動車を使っています。そうした方々によりいっそう重い税がかかる制度は、とうてい国民の理解を得られないものと考えています」
税制度の不公平な問題について説明し、さらに永塚副会長は以下のように続けた。
「こうした課題にしっかり向き合わず、国民的議論もないまま、拙速に走行距離課税といった措置を導入することに対しては断固反対したい。
電動化による燃料税収の減収ぶんを、手っ取り早く取れるところからとりたいといった局所的な決め打ち、先行増税ではなく、ユーザーの皆さまが納得できるかたちでの、国民的議論をお願いしたいと考えています」
日本の自動車関連諸税については、かねてより自工会から「世界一高い」という指摘があった。クルマにまつわる税制度については、この記者会見での自工会の豊田章男会長の発言が非常に的を射ている。いわく。
「(日本の自動車関連諸税は)高いだけでなく複雑です。もちろん日本の自動車関連諸税は高い。ただ、私どもはただ【高いから減らしてくれ】と言っているわけではありません。自動車を巡る環境が百年に一度の変革期を迎えるなかで、モビリティ社会のため【さまざまな局面でお金が必要だ】という事情はよくわかります。そのことをしっかり踏まえたうえで、各省庁の綱引きではない税制度の構築をお願いしたい。いったい日本をどうしていきたいのか、どういう方向へ持っていきたいのか。そういう腰を据えた骨太の改革を、【自動車ユーザーも国民である】という認識のもと、進めていただきたい」
経団連は2022年9月、(自動車産業を中心とした)モビリティ関連企業が集まる「モビリティ委員会」を立ち上げ、豊田章男氏が委員長に就任した。そして今年11月、同委員会は官邸との懇談会を実施。日本の成長に、自動車産業がどれくらい貢献できるかを、政府首脳に直接伝えることができた。
「残念ながらこの30年間、日本経済は成長を止めてしまいました。自動車産業は失った日本の活力を取り戻すために尽くすことができます。政府へきちんと我々の要望を直接伝えられるようになったことで、ようやくそのスタートラインに立てたと考えています」
豊田会長はそう語る。
燃料には二重課税の問題があり、また古いクルマへの一律重課税にも問題がある。政府による自賠責保険運用益の6000億円借入問題もカタが付くのに時間がかかりそうだ。
そうした自動車ユーザーへの一方的な負担を放置したまま「てっとり早く取れるところから取る」という考えには、とても理解が得られないだろう。
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