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【まいどなニュース】人住まぬ廃虚に魅せられた「廃屋ジャンキー」建築士の挑戦 100万円で空き家がホテルライクな人気物件に/2023.01.01

【まいどなニュース】

2023.01.01

「廃屋ジャンキー(中毒者)」を名乗る1級建築士がいる。ボロボロになった空き家を購入し、あふれるセンスで人気物件に改修する。そしてルールは、資材にできる限り廃材を使うこと。そんな彼が持ち続けているのは、資本主義中心の街づくりや新築至上主義への反骨心だ。

100万円で購入、ホテルライクな部屋に

神戸市長田区の住宅街に、外観が見えないほど雑草に覆われた空き家がぽつんとあった。室内にもツタが茂り、屋根から空が見えていた。購入価格は100万円。10カ月後、モルタル風の床に暖炉、ホテルライクな白いタイルを備えた空間に生まれ変わった。天井には、元々あったはりがむき出しにされ、良い味を醸す。現在は売却されている。

 手がけたのは西村周治さん(40)=神戸市。「これを直すことができれば、どんな建物でも直せるんじゃないかと思った」。これまでに改修を手がけた物件は22件ほどで、ほとんどが完成後、すぐに入居者や買い手が決まる人気物件になった。

収入なく家賃1万5千円の長屋をDIY

西村さんは京都市出身。神戸芸術工科大学を卒業後、アルバイト生活を送っていたが収入が月7万円程度だったため、住んでいた家賃5万円のアパートを出るしかなかった。そこで神戸市内の下町にあった商店街エリアで町づくりや空き家改修に関わっていた大学の先輩を頼り、商店街の長屋に月1万5千円で暮らし始めた。

 拾ってきた廃材で床を直し、水道を通し、風呂を設けた。快適な暮らしを手に入れた。造船所近くにあった商店街にはアーティストや労働者らが集まった。稼ぎが少なくても後ろ指が指されない、自由で寛容な暮らしは楽しく「愛にあふれていた」と西村さん。

再開発で長屋を強制退去。そして母の死…「生きる意味は」

しかし、商店街エリアは老朽化に伴い徐々に再開発され、「投資家がお金をもうけるためのワンルームマンション(西村さん)」が立ち並んだ。8年ほど暮らした長屋からの強制退去を告げられ、人びとも散り散りになった。「悔しかったし、資本主義による街づくりを見せつけられた」と西村さん。

そんな時、闘病生活を送っていた母親が亡くなった。「生きる意味を考えた時、廃屋を直し、使ってもらうことに行き着いた」。バイト生活に区切りを付け、個性的な物件を扱う「神戸R不動産」で不動産仲介業を担いつつ、改修業を始めた。買い取った廃屋に住みながら修理しては、賃貸や売却に出す。それを繰り返すヤドカリのような生活を送った。

 廃屋を再生させるためのルールは、できるだけ廃材を使うことだ。解体されたマンションモデルルームの窓ガラスや断熱材、舞台美術に使われた木材などを譲り受けて活用する。

「見向きもされないごみや廃屋が持つ意味を伝えたい」

西村さんは「光と闇」や「生と死」という対極の言葉を挙げ「どちらにも意味があるから存在している」とする。その上で「製品とごみ」「新築と廃屋」についても同様だとし「どちらか一方に立つと、対極側の価値が見えない。僕は誰も見向きもしないごみや廃屋の価値を伝えたい」と語る。

 日本の空き家は増加傾向にあり、空き家率は2018年時点で13・6%。西村さんは「日本には新築至上主義のようなものが根付いているが、僕は新築を建てる意味が分からない」とする一方「空き家が増えるということは、有効活用できる資材が増えていっている状況」とポジティブにも捉えている。

地価が低いエリア「建築の力で豊かにできる」

地方と都市部で地価にとんでもない格差がある点についても違和感を持っており「土地はしょせん、同じ土や同じ空気で構成されている。建築の力や住み手の考え方で、価値が低いとされる場所も豊かな空間に変化させることができるはずだ」。自らが進む道に可能性を感じている。空き家や廃材の相談については、西村さんが率いる「西村組」のホームページ(https://nishimura-gumi.net/home/)から。


 

 

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