【foodfun】
2023年3月6日
水産卸売商社のクラハシ(広島・福山、天野文男社長)は、福山大学の指導を受けながら、世界初(同社調べ)となるシロギスの「完全養殖」による量産化に成功した。これを受けて専用サイト(https://www.kurahashi.co.jp/initiatives/bingonohime/)を開設するとともに、今後、福山大学が命名したブランド名「びんごの姫」として出荷していく。
完全養殖とは、人工ふ化した子魚を育て、親魚になった時に採卵して人工ふ化する技術で、これにより天然資源に頼らず、すべてのプロセスを人工下で育てることが可能になる。シロギスは、北海道と沖縄を除くほぼ全国で漁獲され、全体的にパールピンクや虹色に輝いて見える魚体の美しさから、「海の女王」とも呼ばれる高級魚。透明感のある白身で血合いは薄く、内臓も含めて臭みがないので刺身や昆布締めでのほか、熱を通しても身が締まらないことから、ふっくらとした天ぷらやフライ、塩焼きなどにも向いている。
春から夏にかけての水揚げが多く、それ以外の時期は極端に漁獲量が減るためシーズンオフでは高値で流通されており、近年は漁獲量も10分の1に激減。近縁種が代替として輸入されているものの、シロギスの上品な甘さやくせのない淡白な味わいには及ばないという。そして「びんごの姫」は、天然魚より傷がなく鮮度が長持ちするという特徴を持っているという。
福山大学では、2015年からシロギスの生態や特徴を研究し、産卵期のコントロールや飼育技術の開発を進めており、18年からはクラハシが実証化に参画。同社が保有する沖縄県の陸上養殖施設で、福山大学で生まれた稚魚を育て完全養殖の実現に取り組んでいた。今回、天然魚獲期外のオフシーズンである3月から10月の安定供給が可能になったことから、「びんごの姫」ブランドとして本格出荷することとなった。
現在は50トンの陸上養殖水槽を24基活用して養殖しており、将来的には生産量を50万尾まで増やし、国内だけでなく海外への輸出も視野に入れて事業展開していく予定だ。