赤字額は、比較可能な1985年以降過去最大となっているようですが、今回の赤字額1兆9766億円の大きな原因はエネルギー(LNG=液化天然ガスや石炭など)の輸入額が膨らんだことで、貿易による稼ぎを示す「貿易収支」が3兆1818億円の赤字となったためとされています。
資源に乏しい国が、金融緩和による自国通貨安を誘導すれば必然的に起きるあたりまえのことですが、日本自体に金融政策選択の余地はかなり限られている状況で、「円安・債券安(金利高)・原油(エネルギー)高」というのは、将棋で言うところの「日本沈没(1974)」ドラマを思い起こさせます。2023.3.9(N)
【財務省】
令和5年3月8日
令和5年1月中 国際収支状況(速報)の概要
Ⅰ経常収支
金額 | 前年同月比 | ||||
---|---|---|---|---|---|
貿易・サービス収支 | ▲3兆9,401億円 | ▲1兆5,532億円 | (赤字幅拡大) | ||
貿易収支 | ▲3兆1,818億円 | ▲1兆6,021億円 | (赤字幅拡大) | ||
輸出 | 6兆8,227億円 | +2,237億円 | (+3.4%増加) | ||
輸入 | 10兆45億円 | +1兆8,258億円 | (+22.3%増加) | ||
サービス収支 | ▲7,584億円 | +489億円 | (赤字幅縮小) | ||
第一次所得収支 | 2兆2,905億円 | +3,509億円 | (黒字幅拡大) | ||
第二次所得収支 | ▲3,270億円 | ▲1,939億円 | (赤字幅拡大) | ||
経常収支 | ▲1兆9,766億円 | ▲1兆3,962億円 | (赤字幅拡大) |
「経常収支」は、「貿易収支」が赤字幅を拡大したこと等から、赤字幅を拡大した。
1.貿易・サービス収支:▲3兆9,401億円の赤字(前年同月比▲1兆5,532億円赤字幅拡大)
「貿易収支」が赤字幅を拡大したことから、「貿易・サービス収支」は赤字幅を拡大した。
(1) 貿易収支:▲3兆1,818億円の赤字(前年同月比▲1兆6,021億円赤字幅拡大)
輸入額の増加が輸出額の増加を上回ったことから、「貿易収支」は赤字幅を拡大した。
-
輸出:6兆8,227億円(前年同月比+2,237億円[+3.4%]増加、23か月連続の増加)
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輸入:10兆45億円(前年同月比+1兆8,258億円[+22.3%]増加、24か月連続の増加)
[参考1]令和5年1月分貿易統計(通関ベース:財務省関税局2月24日付公表)
(1) 輸出:6兆5,506億円(確報値:前年同月比+2,188億円[+3.5%]増加、数量:同▲11.4%減少、価格:同+16.8%増加)
- 「商品別」では、自動車(同+1,164億円[+14.9%]、数量:同+1.8%)、鉱物性燃料(同+287億円[+18.8%])、建設用・鉱山用機械(同+229億円[+22.5%])等が増加。
- 「主要地域別」では、対北米(同+1,243億円[+10.5%])、中東(同+697億円[+43.4%])等が増加。
(2) 輸入:10兆491億円(9桁速報値:前年同月比+1兆5,179億円[+17.8%]増加、数量:同▲2.4%減少、価格:同+20.7%増加)
- 「商品別」では、石炭(同+3,649億円[+93.4%]、数量:同+0.7%)、液化天然ガス(同+3,169億円[+56.9%]、数量:同+0.5%)、原粗油(同+2,628億円[+35.3%]、数量:同+6.4%)等が増加。
- 「主要地域別」では、対アジア(同+6,276億円[+15.0%])、大洋州(同+3,328億円[+42.4%])等が増加。
[参考2]原油価格(価格は石油連盟資料による、前年同月比は財務省で算出)
- ドルベース:88.14米ドル/バレル(前年同月比+10.6%)
- 円ベース:73,234円/キロリットル(前年同月比+27.1%)
(2) サービス収支:▲7,584億円の赤字(前年同月比+489億円赤字幅縮小)
「旅行収支」が黒字幅を拡大したこと等から、「サービス収支」は赤字幅を縮小した。
[参考3]訪日外国人旅行者数(1月):1,497,300人(前年同月比+8,327.9%)
出国日本人数(1月):443,100人(前年同月比+490.9%)
(出典:日本政府観光局(JNTO))
2.第一次所得収支:2兆2,905億円の黒字(前年同月比+3,509億円黒字幅拡大)
「証券投資収益」が黒字幅を拡大したこと等から、「第一次所得収支」は黒字幅を拡大した。
Ⅱ金融収支
1月 | 前月 | ||
---|---|---|---|
直接投資 | 1兆9,829億円 | 1兆7,923億円 | |
証券投資 | 9兆4,628億円 | 1兆9,489億円 | |
株式・投資ファンド持分 | 1兆3,729億円 | 1兆8,663億円 | |
中長期債 | 4兆4,696億円 | 4兆7,903億円 | |
短期債 | 3兆6,203億円 | ▲4兆7,077億円 | |
金融派生商品 | ▲7,277億円 | ▲1,753億円 | |
その他投資 | ▲8兆9,379億円 | ▲4兆5,928億円 | |
外貨準備 | 1,036億円 | 3,295億円 | |
金融収支 | 1兆8,838億円 | ▲6,975億円 |
「証券投資」において純資産が増加したこと等から、「金融収支」は純資産が1兆8,838億円増加した。
1.金融収支・資産(居住者による投資)
(1) 対外直接投資:1兆3,101億円の資産増
本邦企業による海外企業の増資引受け等がみられ、資産増(実行超)となった。
(2) 対外株式・投資ファンド持分投資:1兆6,427億円の資産増
信託銀行(信託勘定)等が買い越しとなったことから、資産増(取得超)となった。
(3) 対外中長期債投資:8,849億円の資産増
信託銀行(信託勘定)が買い越しとなったこと等から、資産増(取得超)となった。
2.金融収支・負債(非居住者からの投資)
(1) 対内直接投資:▲6,728億円の負債減
海外企業による本邦企業への出資の回収等がみられ、負債減(回収超)となった。
(2) 対内株式・投資ファンド持分投資:2,698億円の負債増
電気機器等の業種において買い越しとなったことから、負債増(取得超)となった。
(3) 対内中長期債投資:▲3兆5,847億円の負債減
中長期国債が売り越しとなったこと等から、負債減(処分超)となった。
[参考4]ドル・円相場(インターバンク直物相場・東京市場中心値の月中平均レート)
130.2円/米ドル(前年同月:114.83円/米ドル、前年同月比13.4%の円安)
ユーロ・円相場(インターバンク直物相場・東京市場17:00現在レートの月中平均レート)
140.64円/ユーロ(前年同月:129.99円/ユーロ、前年同月比8.2%の円安)