【日経新聞】
2023年4月20日
健康保険組合連合会は20日、主に大企業の会社員らが入る健保組合の2023年度の予算集計を発表した。全国およそ1400組合を合算した経常収支は5623億円の赤字となる。赤字幅は過去最大で、2805億円だった22年度の2倍を見込む。
医療費の伸びに加えて高齢者医療への拠出が膨らんでおり、現役世代にとって重荷となっている。
赤字を見込む健保組合は22年度から130組合増えて1093組合となった。その割合は全体の8割近くに達する。黒字組合は137組合減って287組合にとどまる。
医療費の支払いに充てる保険給付費は22年度比5.5%増えて4兆7820億円となった。予算計上の土台となる22年度の医療費が新型コロナウイルス禍で膨らんでおり、同水準の支出が続くとみた。
日本の医療保険制度は現役世代が高齢者医療費の一部を賄う仕組みだ。拠出金は進む高齢化を反映して22年度比で7.3%増えて3兆7067億円となった。なかでも75歳以上の後期高齢者への支援金は10%程度増える想定とした。
高齢者医療への拠出金は増え続ける公算が大きい。経常支出の4分の1ほどは後期高齢者向けの支援金が占める。65〜74歳の前期高齢者向けの納付金とあわせると、保険料のおよそ4割が高齢者医療の下支えに使われる計算だ。
保険料率を引き上げる組合も増える。22年度から23年度にかけて135組合が引き上げ、平均保険料率は22年度から0.01ポイント上昇して9.27%となった。後期高齢者医療制度が発足した08年度と比べると2ポイント程度伸びた。
赤字幅の拡大を反映し、収支の均衡に必要な実質保険料率は10.1%に上昇。初めて10%の大台を超える。これまで経常収支の赤字額が最も大きかったのはリーマン・ショックの影響を受けた09年度決算の5234億円だった。
健保組合は従業員と勤務先が毎月払う保険料をもとに医療費の支払いなどの保険給付、健康診断などの保健事業を担う。主に大企業の従業員と家族ら2800万人ほどが加入する。
政府は少子化対策の拡充に充てる財源として社会保険料からの拠出を検討している。保険料が上乗せになれば現役世代の一段の負担増につながりかねない。高齢者も含めた幅広い負担のあり方や、社会保障制度全体の見直しによる歳出改革も欠かせない。
給付費の抑制を巡っては、健保組合がジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用促進などで給付費を抑える取り組みを続ける。給付を抑える仕組みと合わせて負担の平準化に向けた検討も必要となる。