【熊本日日新聞】
2023年5月23日
熊本市の大西一史市長は23日の定例記者会見で、市役所業務への対話型人工知能(AI)「チャットGPT」導入に向けた実証実験を始めると発表した。6月からの3カ月間、業務効率化や市民サービス向上に活用できるかといった課題を探り、10月以降の本格導入を目指す考え。
チャットGPTは、神奈川県横須賀市が4月から職員約4千人を対象に試験導入している。県内での実証実験は熊本市が初めてで、9月末までに利用のガイドラインを作る方針だ。
各課の職員計100人が参加。デジタル戦略課や情報政策課などがリスクや運用ルールをまとめ、改革プロジェクト推進課や政策企画課などがあいさつ文や計画素案の作成業務、データの収集・検索を通じて利活用について検証する。
利用に当たってはセキュリティーに配慮し、入力した情報を使ったAIの学習機能を制限。個人情報や機密情報は入力せず、AIが回答した文章について事実関係を確認する。
大西市長は「対話型AIはこれから加速度的に進化する技術。リスクに配慮した上で、働き方改革や行政能力の向上に向けて前向きに使いたい」と述べた。
チャットGPTは米新興企業が開発し、入力した質問にAIが回答文章を生成する。世界中で利用者が増えているが、個人データの不適切な収集や著作物の無秩序な利用につながる恐れも指摘されている。
市デジタル戦略課は「誤った情報や著作権侵害がないか見極めるリテラシー(能力)が求められる。実証実験では生成された文章をそのまま使わず、あくまで補助的に使う。職員の目で確認して著作権侵害の恐れがないかも確かめる」としている。(河内正一郎)