【GGO】
2023.6.28
急速な人口減少に伴い、様々な業界でマーケットの縮小が続いています。苦境に立たされる中小企業は、生き残りのためにどのようなビジネスモデルを築くべきでしょうか。本連載では、戸波亮氏の『葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた』の中から一部を抜粋し、新事業展開によって経営基盤強化を実現した葬儀会社の事例を紹介しながら、中小企業の生き残り戦略を探ります。
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ブランド力・シェア拡大に寄与した生花業への参入
利益率の改善を図り外注業務の内製化を推し進めるにあたって、私がまず手を付けたのが生花業への参入です。1998年に袖ケ浦に2つめのメモリアルホールを開設するとともに生花を扱う子会社を設立しました。
そもそも生花の小売ビジネス(フラワーショップ)は、卸市場で仕入れた原価の2.5倍から3倍の売値を付けて店舗で販売します。しかも特別な加工や処理が不要です。ただし、生花はあまり日持ちがせず、売れなければ廃棄せざるを得ません。
また、フラワーショップは小規模なところがほとんどで、卸市場での仕入も小ロットで割高になります。仕入や販売をうまくコントロールしてロスを減らし、また1回あたりの仕入れロットを大きくすれば単価が下がり、十分な利益を確保できる可能性があるのです。
私のアイデアは、葬儀で使う生花だけでなく、自社のフラワーショップを設けて一般向けにも生花を販売するということでした。なぜなら、フラワーショップで売るのはまだ蕾の状態の花が中心です。せっかく花を買って帰ったのであれば、できるだけ長く楽しみたいのが消費者の心理です。
一方、少し日にちが経って咲き始めた生花は祭壇に飾るのに適しています。通夜や葬儀式・告別式の際、花がきちんと開いていないと見栄えがしません。
つまり、蕾の状態で大量に仕入れた生花を温度管理した保管庫に入れ、まずはフラワーショップでその一部を販売し、その後、花が開いてきたら葬儀で使うのです。
こうすれば廃棄処分を減らし、利益率を上げることができます。また、葬儀に用いる生花についても、よくある菊だけでなくいろいろな種類の花を使って華やかで美しい飾り付けができます。
私はこうしたメリットを活かして、花祭壇を自社の売りにすることにしました。手彫りの白木の祭壇は原価が400万~500万円します。その減価償却費に比べれば、フラワーショップでの販売用と一緒に仕入れた生花を使った花祭壇のほうがかなりコストダウンできるのです。
今では生花を大量に用いた花祭壇はどの葬儀会社でも一般的になりましたが、おそらく私の会社は全国で最も早いほうだったと思います。実際、他社では特別価格であった花祭壇が、私の会社では一般的なプランとして選べ、お客さまからはとても喜ばれるとともに、地元の葬儀市場においてブランド力とシェアを上げることができました。
とはいえ、新しいビジネスとして生花業を始めるにはいろいろハードルがありました。
まず、社内には経験者がおらず、フラワーショップに勤めたことのある人を中途採用しました。そして花の卸市場でのセリに参加できる資格の取得を目指したのですが、当時はそう簡単にはいきませんでした。あちこち歩き回り、少しずつ業界の仕組みを理解し、応援してくれる人に出会い、なんとか1年ほどで事業を軌道に乗せることができました。
また、社内の人手も足りず、最初の4~5年間は私自身が花祭壇の飾り付けを行っていました。複数の業務を掛け持ちするのは私の会社の大きな特徴です。生花業のために採用した社員ももちろん、最初から葬儀業との掛け持ちで業務にあたってもらっています。
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