【kumanichi】
2023年7月7日
「令和の『令』の下の部分を、カタカナの『マ』の上に点を打った形(楷書体)で書くと、行政機関の窓口で『間違っている』と書類を突き返されることがあるらしい」。熊本市西区の自営業女性(59)から情報が寄せられた。確かに印刷物などでは明朝体である「令」の形しか見ないが、普段は楷書体でも書くような…。SNSこちら編集局で取材した。
調べると、元号が令和に変わる前の話だが、文化庁が2016年にまとめた漢字の書き方についての指針が見つかった。窓口などで「下がマ」の楷書体で手書きすると「明朝体の字形との差異から別の漢字であると判断され、印刷文字と同じ形に書き直すよう求められるといった事例が報告された」との記載があった。
文化庁に確認すると「『書き直すように求められた』という声は確かにあった。しかし、どちらも同じ漢字で間違いではない。文化庁としてもそのように周知している」とした。
現場ではどうか。戸籍や住民票などの申請を扱う熊本市中央区役所の区民課では、「下がマ」の形で書かれていても突き返した例はないという。
ただ、2004年に戸籍が電算化され、戸籍上の名前を明朝体の「令」でしか表示できなくなった。電算化直後には市民から「名前の漢字が違う」との問い合わせが複数あり、「電算化により市で使う字が明朝体の『令』の形しかなくなった」とその都度、説明したという。
「令」の場合は形が違う同一の漢字だが、人名用では「凛[りん]」と「凜[りん]」のように形が似ていても窓口業務では別の漢字という例もある。区民課戸籍班の古賀千香子班長(54)は「窓口業務では法務省が出している『戸籍実務六法』を片手に、漢字を念入りに確認しています」と話した。(東有咲)
■小学校では「下がマ」の楷書体で
小学校では「令」の漢字をどう教えているのか。
国語の授業について研究する「熊本市小学校国語教育研究会」の事務局長を務める月出小学校の髙宗智史教諭(44)によると、学校では基本的に教科書に載っている字体通りに教える。「令」は楷書体だ。
「『令』は4年生で習う常用漢字。教科書には『下がマ』の形で載っていて、その通りに教えています」
では、もし漢字テストで明朝体の「令」を書いた子がいたらどうするのか。「同じ漢字なので正解にします」と髙宗教諭。もちろん部首が違ったり、突き出ないところが突き出ていたりと明らかに違う漢字になっていたらバツだが、細かい部分の判断は教師次第なのだとか。
最近はデジタル化が進み、授業中にノートではなくタブレットに、キーボードや画面で指を動かしてメモを取る児童もいるという。髙宗教諭は「だんだん字を書くことが少なくなり、読むこと重視の世の中になってきている。書くことを覚えるのには時間がかかるので、できる限り丁寧に教えたい」と話した。(東有咲)