日本航空(JAL)の名誉会長として記者会見に臨んだ稲盛和夫氏 Photo:JIJI

「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は、事業の多角化について「企業経営者にとっては絶対条件」とまで断言しています。柱となる事業が多ければ経営が安定するからです。一方で、多角化企業が専業企業と戦って勝つことの難しさについても語っています。では、稲盛氏はどうすれば多角化を成功させられると考えていたのでしょうか。(イトモス研究所所長 小倉健一)

経営の神様・稲盛和夫氏が断言
「好況になると必ず企業は多角化に走る」

「景気が良くなると必ず企業は多角化に走る」――。経営の神様と言われた稲盛和夫氏は、生前にこう話している。

稲盛氏が創業した京セラがセラミック事業で成長を遂げたとき、それを横目で見ていた大企業たちは「京セラがあれだけもうけているのだから私たちもいける」と考え、「多角化戦略」の名の下にセラミック事業へと参入してきたのだという。

最近の新聞社や出版社などは本業で何をやってももうからないので、全く異業種である不動産事業に手を伸ばしているが、一般的に、企業は利益や売り上げを稼ぎ出している事業、他社と比べて技術的に優れている分野を伸ばせないかと考えるものだ。

今回はイノベーションや事業の多角化、新しい分野への挑戦について、稲盛氏はどうすれば成功できると考えていたのかを中心にお伝えしたい。