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更新日: 2023.07.24
本記事では、始業時間よりも早く出社して部署の机を掃除する場合に残業代を請求できるのか解説します。
残業代はいくら請求できる?
就業時間外に仕事をして残業代を請求できるかどうかについては、その業務を行う時間が使用者である会社の指揮命令下にあったかどうかによって決まります。
上司や会社側の指示で部署の机の掃除をするように言われ、毎日1時間早く出社することで法定労働時間を超えた場合は、時間外労働となって割増賃金(一般的な残業代)が支払われます。
労働基準法32条では「1日8時間、週40時間」の法定労働時間が設定されており、企業は原則この時間の範囲内で所定労働時間を定めなければなりません。7時間や7.5時間など少し短いケースもありますが、法定労働時間と所定労働時間が同じ時間になっていることが多いでしょう。
今回の新入社員が勤める会社の所定労働時間も1日8時間とすると、毎日1時間早く始業すれば合計9時間勤務となり、1時間分は時間外労働と扱われて残業代が発生します。
・所定労働時間:8時間
・所定労働日数:20日
・月収:20万円
上記の場合1時間あたりの賃金は1250円です。割増賃金が「1時間あたりの賃金×1.25(割増率)×残業時間」で計算されると約1560円となります。つまり毎日1時間早く始業すると、1ヶ月で約3万円の残業代が発生する計算です。
使用者である会社の指揮命令下にあったかどうか
残業をめぐってたびたび争点になるのが「その時間が使用者である会社の指揮命令下にあったかどうか」です。指揮命令下にあると判断されると残業代支給の対象となり、そうでない場合は対象外となります。
「部署の机の掃除をする」行動自体は全く同じでも、上司の命令による場合は業務とみなされる一方で、自発的に掃除をするために行っている場合は業務外のため残業代は支給されません。
会社の指揮命令下にあるかどうかは過去にも裁判で争点となっています。
最高裁は「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条の労働時間に該当する。」と判断しています。
「業務の準備行為等」も対象となるため、部署の机の掃除も含まれることがあります。明確な業務命令が存在しなくても、上司が毎日早く出社して机や椅子の掃除を行い、部署全体で行うように言われている場合は、事実上指揮命令下にあるといえるでしょう。
分からなければ、まずは上司に確認する
毎日1時間早く来て部署の机の掃除をすることは業務なのか、そうではないのか気になる場合は、直接上司や総務人事部門の担当者に質問することをおすすめします。こちらが本気で捉えていても、相手は冗談のつもりで発言している可能性も否定できないからです。
「毎日1時間早く来て部署の机の掃除をするのは業務に含まれますか」などと質問し「そうだよ」と回答があれば労働時間とみなされ、法定労働時間を超えると残業代の支給対象となります。
まとめ
本記事では、毎日1時間早く来て部署の机の掃除をするように言われた場合に残業代は発生するのか解説しました。
従業員に対して本来の始業時間よりも早く出社するように求めること自体は違法ではありません。ただし、たとえ机の掃除などの雑務であっても、「指揮命令下」にあるとみなされると労働時間に含まれ、場合によっては残業代が発生することもあります。
トラブルを防止するためにも、あいまいな状態にせず使用者である会社の指揮命令下にあるか否か明確にしておいたほうが良いでしょう。勤怠管理については会社ごとに考え方や仕組みが異なることが多いため、勤務先の方針を把握することも大切です。
出典
厚生労働省 労働基準法
裁判所 最高裁判所判例集 平成7(オ)2029
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー