春から秋にかけて,野山のダニ類の活動が活発になります。野山のダニ類に刺された場合,日本紅斑熱,つつが虫病,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)といった病気に感染することがあります。
特に、日本紅斑熱は1年の中で10月に一番多く発生しています。墓参り,草刈り,栗拾い,レジャーや農作業など,野山や畑,草むらなどで活動する際は,ダニ類に刺されないよう注意しましょう!
厚生労働省「ダニ」ご注意ください
日本紅斑熱
日本紅斑熱は,「日本紅斑熱リケッチア」という細菌をもったマダニ類に刺されることで感染します。
潜伏期間は2~8日です。
頭痛,倦怠感,寒気,発熱(38~40度)の症状が出た後,やや遅れて体幹や四肢に米粒大から小豆大の紅斑が出現します。紅斑に痛みや痒みを感じないのが特徴です。典型例では,紅斑は四肢に強く出現します。
注意深く探すと,皮膚にマダニ類の刺し口が見つかります(刺し口が見つからない場合もあります。)。刺し口は,つつが虫病の刺し口ほど大きくはありません。一般的に,発熱,紅斑,刺し口が三大特徴になります。
治療には,テトラサイクリン系抗菌薬を使用します。重症例の場合は,テトラサイクリン系抗菌薬とニューキノロン系抗菌薬の併用療法を行うことが推奨されています。
福山市内においても,しばしば患者の発生が報告されている感染症です。
つつが虫病
つつが虫病は,「つつが虫病リケッチア」という細菌をもったツツガムシ(ダニの一種)に刺されることで感染します。年間を通して発生が見られますが,春(4,5月)と秋から初冬(10~12月)に患者の発生が集中しています。
潜伏期間は5~14日です。
症状は日本紅斑熱とよく似ています。典型例では,紅斑は体幹に強く出現します。
注意深く探すと,皮膚にかさぶたを伴った特徴的なツツガムシの刺し口が見つかります。一般的に,発熱,紅斑,刺し口が三大特徴で,患者の90%以上に認められます。
治療には,テトラサイクリン系抗菌薬を使用します。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は,「SFTSウイルス」というウイルスをもったマダニ類に刺されることで感染します。また,感染者の血液・体液との接触感染や感染した動物(イヌ・ネコ)からの感染も報告されています。
潜伏期間は6~14日です。
発熱と消化器症状(吐き気,嘔吐,腹痛,下痢)が出現します。頭痛,筋肉痛,リンパ節腫張,出血症状などが出現することもあります。
2011年に中国で初めて確認された感染症で,日本国内では2013年1月に患者が確認されました。
比較的新しい感染症であるため,現在のところ治療法が確立されておらず,治療は対症療法となります。現在,抗ウイルス薬の臨床研究が行われています。
福山市内において,2013年以降,毎年0~2件程度の患者の発生が報告されています。
予防方法
ワクチンがありませんので,ダニ類に刺されないことが唯一の予防方法です。
野山や畑,草むらなど,ダニ類の生息場所に出かける際は,ダニ類に刺されないよう次のことを心がけましょう。
- 長袖,長ズボンを着用しましょう。シャツの裾はズボンの中に,ズボンの裾は靴下や長靴の中へ入れ込むとより効果的です。
- 肌の露出を避けましょう。帽子や手袋を着用し,首にタオルを巻くと効果的です。
- 足を完全に覆う靴を履きましょう。
- 防虫スプレーは,ダニ類に効果のある成分(ディート,イカリジン)が含まれている製品を使いましょう。また、衣類の開口部や皮膚の露出する部分などに使用しましょう。腰から下などダニ類が取り付きやすい部分に服の上から使うのもよいです。
- 野山や畑,草むらに入った後は,衣服をはたいてダニ類を落としましょう。
- 帰宅後は,すぐに入浴して身体をよく洗い,ダニ類が付着していないか確認しましょう。
- 脱いだ衣服はすぐに洗濯するか,ナイロン袋に入れて口をしばっておきましょう。
※すべてのダニ類が病原体を持っているわけではありません。
※人から人への感染はありません。
もしダニ類に刺されてしまったら?
吸血中のダニ類に気がついた際,無理に引き抜こうとすると,ダニ類の頭部がちぎれて皮膚の中に残ってしまったり,ダニ類がつぶれて体液が身体の中に入ってしまう可能性があります。無理に自分で取ろうとせず,医療機関(皮膚科など)に受診して除去してもらってください。
また,野山や畑,草むらなどに出かけた後,数週間程度は体調の変化に注意し,
- 倦怠感,悪寒,急な発熱(38~40℃)が出る。
- ダニ類にかまれた跡がある。
などの症状が見られたら,我慢をせず,早期に医療機関を受診し,「野山や畑,草むらなどに入ってダニ類に刺された可能性がある。」ことを伝えてください。
関連情報
福山市内の感染症発生状況
ダニ媒介感染症(厚生労働省ホームページ)
マダニ対策,今できること(国立感染症研究所ホームページ)
日本紅斑熱とは(国立感染症研究所ホームページ)
マダニ類の活動が盛んな季節です!「日本紅斑熱」に気を付けましょう!(広島県ホームページ)
つつが虫病とは(国立感染症研究所ホームページ)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(厚生労働省ホームページ)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは(国立感染症研究所ホームページ)
マダニの感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に注意しましょう!!(広島県ホームページ)