【gentosha】
2024.1.25
毎年誕生月に届くねんきん定期便では、自分が将来受け取ることのできる年金受給見込額を確認することができます。ただし、その額に満足できる人は、ほんのひと握りでしょう。そこで今回、株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の井内義典CFPが、将来の年金受給額を大幅に増やす“テクニック”について、具体的な事例をもとに伝授します。
月9万円!?…「年金受給見込額」に絶望したAさん
Aさん(男性・59歳)は非正規雇用で勤務しており、厚生年金に加入中です。同居していた母親が亡くなったことをきっかけに、Aさんは自身の老後について考えるようになりました。
Aさんはこれまで合計20年ほど厚生年金に加入し、国民年金保険料の未納も数年ありましたが、59歳の誕生月に届いた「ねんきん定期便」を見ると、65歳からの公的年金は年額108万円の見込と表示されています。月額にするとわずか9万円です。
Aさんは、両親の遺産は多少あるものの、貯金はほとんどできていません。加えて、非正規雇用の期間が長かったため、企業年金もほとんどない状況です。
「蓄えも少ないのに、月9万円の年金でどうやって生活しろというんだ……」Aさんはこれからの老後に絶望していました。
そしてふと「みんなの年金額はいったいどれくらいなんだろう」と疑問に思ったAさんは、年金額の平均について調べてみることに。
いまの時代、「年金だけの暮らし」は厳しい
65歳以上の老齢年金の受給額平均は164万円(月約13万6,000円)となっており、性別をAさんと同じ男性だけに絞ると平均210万6,000円(月約17万5,000円)となっています※。
※ 厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」より。
平均額の人でも公的年金だけでやりくりすることは難しいなか、平均額よりも少ないAさんの年金額は、非常に心許ないといえます。Aさんは60歳以降も勤務する予定ですが、「このまま一生働くしかないのか」とうなだれていました。
「ねんきん定期便」は“60歳までの加入条件”が前提
たしかに、月9万円の年金だけでは生活できないでしょう。しかし、諦めるのはまだ早いです。Aさんはいまからでも、年金を増やすことができます。
Aさんは59歳になったときに届いた「ねんきん定期便」を見て、65歳からの老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計が年額108万円であることをその目で確認しました。
しかし、その59歳時点のねんきん定期便に表示されていた見込額はあくまで60歳までいまの加入条件が続いたことを前提とした額であり、60歳以降の年金の加入期間については加味されていません。
厚生年金自体は最大70歳になるまで加入できますので、Aさんは60歳から70歳まで10年間働けば年金額を増やせるということです。つまり、現在59歳のAさんが年金を増やすチャンスはまだまだあるといえます。