【newsdig】
2024年3月31日
防災を考えるとき、必ず思い浮かべるのが「停電対策」。大きな地震や強い台風が接近したときには、長期間停電になることもあるほか、落雷などでも一時的に停電することもよくある。
特に、夜は家の中が真っ暗になって、とても心細く不憫な思いをすることになってしまう。そのような事態を防ぐために、明かりの備えは万全に行っておきたい。
災害から命を守る知恵を深掘りする企画『DIG防災』。今回は、身近な物で「明かり」を作るミニ知識を、気象予報士であり防災士でもある筆者・CBCテレビの桜沢信司が実際に試してみた。注意点とあわせて、備えておくべきものを考える。
①70グラムのツナ缶ランプの場合
まずは、警視庁災害対策課の旧ツイッター「X(旧Twitter)」で話題になった「ツナ缶を利用したランプ」。
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<警視庁災害対策課の投稿>
「【身近なモノ活用術】ツナ缶の油を利用したランプです。缶に穴を開け、芯を差し込みます。芯には綿のひも等がよいそうですが、コーヒーのフィルタをこよりにして作ってみました。2時間位もちます。もちろん中身も食べてみました(油が減ってヘルシーかも)」
今回、ツナ缶はサイズによって違いが出るのか確かめるため、70グラムと140グラムの2種類を用意した。また、カキ、オイルサーディン、サバ、焼き鳥の缶も用意してみた。
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まずは内容量70グラムと、比較的コンパクトサイズのツナ缶詰から試してみた。
大豆油が使用されていると明記されている。この油が燃料の役割を果たす。
コーヒーフィルターをちぎって「こより」にし、ろうそくの芯のようにした。
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続いて、缶詰の底にキリで穴を開け、その中にこよりを差し込む。穴を小さくすると紙が入りにくくなるため、少し大きめの4ミリ~5ミリほどの穴を開けた。
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火は簡単に、ライターで着火。紙だけが燃えたあと、油を吸って色が変わっている部分まで達すると、火は少し大きくなった。ただ、数分で落ち着き、火は安定していった。
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火の大きさはローソクとほとんど変わらない。ただ、縦に長いローソクに比べ、倒れる心配はなく定感は抜群だった。明るさは、本の文字がきりぎり読める程度の弱いものでしたが、全く明かりがないよりはましだと感じた。
火がついているときに缶を触っても、熱はあまり感じない。持つこともできる。油の匂いが少しあったが、気になるほどではなかった。
火は25分を過ぎるとかなり小さくなり、周りのものが見にくくなった。
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ストップウォッチで計測すると。消えたのは31分53秒。小さなツナ缶でも30分以上はもつようだ。
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缶を開けるとまだ油は残っていたが、紙のこよりが吸い上げるほどではなかったのか、中のツナフレークには少し隙間ができていて、油が消費されているのがわかりった。
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メーカーに問い合わせたところ「食べられるかと思いますが、本来の食べ方ではないのでおすすめはしません」との回答だった。ただ、私はおいしくたべることができ、食品としての機能は衰えていないように感じた。味の変化はほとんどなかったが、若干塩味が濃くなっているように感じた。
②140グラムツナ缶の場合
同じツナ缶でも、内容量140グラムと大きめのサイズのものでは、どうだろうか?
こちらも同じようにコーヒーペーパーで芯を作り、着火。油の量が多いためか、最初から安定した火がついている。
1時間、2時間経っても火の大きさは安定していた。
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火が弱まり始めたのは、3時間を過ぎたあたり。そこからが長くて、最後はパチパチと音を立てて、3時間44分44秒で火が消えた。
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長い時間火がついていたためか、ツナ缶は全体的にやや熱があったが、手で持てないほどではない。ただ、もし行う場合は、念のため耐熱の受け皿の上に置いておくとよさそうだ。
では、その他の缶詰ではどうだろうか?カキのくんせいの油漬けの缶詰で試してみた。
③カキ、オイルサーディン、サバ、焼き鳥の缶の場合
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カキのくんせいの油漬け(内容量60グラム)でも、問題なく火はついた。試したものはツナ缶と同様に大豆油と書かれていた。
こちらも、油を燃やした後でも中身を美味しく食べることができた。気のせいかもしれないが、くんせいの香りが強く、美味しくなったように感じた。
また、同様にオイルサーディンの缶詰(内容量100グラム)でも試したところ、着火することができた。
カキのくんせい、オイルサーディンとも、火は2時間以上灯り続けた。
ただ、缶詰ならなんでもいいかというと、そうではない。「サバの水煮缶」は火はつかなかった。
サバの脂があるからなんとかつかないかと頑張ってみたが、無理だった。焼き鳥缶も同様に火がつかなかった。
④缶詰め以外でも手製ランプを試してみた
缶詰ではないランプ作りもある。警視庁災害対策課の「X」では、2017年に、「サラダ油のランプ」を紹介している。
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<警視庁災害対策課の投稿>
「停電時に活用できるかにランプを作成しました。耐熱ガラスのコップにサラダ油を入れ、キッチンペーパーで着火するひもを作り、アルミホイルで固定します。1時間使用しても油の量はほとんど減らず、火の勢いも衰えませんでした。火は何度でも付けられます。火から離れる際は必ず・絶対消してください。」
今回は、筆者の家にあった「米油」を50ミリグラム使用した。キッチンペーパーで芯を作り、アルミホイルで固定できるようにして油につける。油がキッチンペーパーに染みこんで来るのを確認してから、着火した。
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すぐに火はつき、そのまま安定して燃え続けた。缶詰のランプより火は安定していたように感じる。
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また、1時間経っても目立って油が減るようなこともなかった。
同様にオリーブオイルでも試してみたが、安定して燃えていた。ただ、オリーブオイルは、若干、部屋の中にオリーブオイルの香りが強く残ったように感じる。
⑤缶詰・油ランプの注意点
実験では、ツナ缶や油をランプの代わりに使うのは問題なかった。特にツナ缶ランプは、明かりが確保できる上に、ランプとして使い終わった後もおいしく食べられ、一石二鳥だと思った。
ただ、問題点はある。例えば、停電時に暗い中で缶詰に穴を開けたり、こよりを作ったりする作業は非常に困難だった。そのため、私は明るい時間帯に作成した。初めて行う人は、なおさら作るのに戸惑うことだろう。
また、火を取り扱うため、常に人が近くで見ていなければなりない。警視庁のXでも、火から離れる場合は必ず消火するよう呼びかけている。
特に大きな地震が起こった後に使用することは、控えた方がよいと思う。大地震の後には再び地震が起こる可能性が高く、火災による二次災害も心配だ。なので、防災用品の中には「懐中電灯」を備えておくことが必要だ。
⑥懐中電灯の使い方にも工夫がある
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今は100円均一ショップにも懐中電灯が売られている。
小さな懐中電灯でも、コップに入れて水のペットボトルを上にのせれば、簡単にランタンを作ることができる。懐中電灯で一部分だけを照らすのではなく、ペットボトルに当たった明かりが乱反射することで、周りを明るくしてくれるのだ。
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また、最近は、防災用にも使えるキャンプ用のLEDランタンも売られている。半日以上明かりがつくものも多く、種類も増えている。
ただ、LEDや電池の場合は、いざ使おうとしたときに充電や電池が切れていることもある。防災用に使用する場合は、定期的に確認することも大切だ。
ツナ缶や油ランプはあくまで緊急的な措置として捉え、懐中電灯など、明かりが確保できるよう備えをしておくことが大事だ。
(気象予報士・防災士 桜沢信司)