日本で初めて指定された 瀬戸内海国立公園
「自然を大切にしましょう。」
今では当然のように浸透している考え方ですが、法律になったのはそう古くはありません。明治維新以降、日本はさまざまな欧米の制度を導入しましたが、自然保護もまた欧米に倣いました。1934年、初めて指定された国立公園のひとつが、瀬戸内海国立公園です。
指定された地域は阿伏兎から小豆島までの瀬戸内海中央部に限定されていましたが、これには事情がありました。欧米では自然保護区を観光地にして成功しています。世界的な不況の中、日本でも観光産業の活性化という狙いがありました。そのため、軍港など観光に不都合な施設がある場所は避けられたのです。
古くから自然と親しんできた日本人でしたが「景観そのものを観て楽しむ」ことが盛んになったのはこの少し前からでした。瀬戸内海の観光は、船で島を巡り、展望台から多島海の風景を楽しむことでした。面白いことに、国立公園の指定範囲には展望地が入っています。海や島など景観を構成する場所だけではなく、景観を俯瞰(ふかん)して楽しむことができる少しだけ標高の高い場所も保護されているのです。そのため、瀬戸内海国立公園の陸地は飛び地が多く、本市でも鞆沖を一望できる後山が指定されています。
90年前、広島・岡山・香川の3県で始まった瀬戸内海国立公園は、戦後二度拡張され、現在では1府10県にまたがる国内でもっとも広い国立公園となっています。
仙酔島の展望台から見た鞆沖
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