6/16(木) 17:45 掲載
【広島ニュースTSS】
広島のがんばる人を応援するコーナー。この春、福山市の島である芸術祭が行われました。仕掛けたのは、地域に魅せられ島に移住した男性とその仲間たち。熱い思いで実現にこぎつけました。
内海大橋でつながった田島と横島からなる福山市内海町。ここで、この春、ある芸術祭が行われました。
ここは、その会場の一つ、ふくろうの花畑カフェ。芝桜が植えられた敷地内に作品が並んでいます。島の景観を生かした芸術祭、その名も「みんなのせとうち備後芸術祭」(4月15日から5月15日までの期間で開催しました)。
(みんなのせとうち備後芸術祭実行委員長・広田和典さん)
「特徴はアンデパンダン(無審査・無償・自由出品の美術展)。出したい人は誰でも出品できる。無料、そのかわり制作費や運賃も全部自分持ち。8歳から80歳まで100人以上が参加しました。作品は200点。びっくりしています。みんな何か発表したいのかな。みんなの美術展になったような、勝手にそんな気がしています」
芸術祭は、田島と横島のほぼ全域で行われました。会場は島内15カ所に、プロ・アマを問わずおよそ200点もの作品を展示。中には、島にある普通の建物も利用されました。
(広田さん)
「昔、縫製工場だった建物。この景色が気に入ってしまって。会場に使わせてくださいといって。どうですか。ここまでにしたんです!」
実行委員長、広田和典さんの作品も展示されています。
(広田さん)
「だいたい、こういう感じの絵です。僕のは。東海村とかチェルノブイリとか、震災とか。全くある日突然被害にあって人生を変えられた人をずっと追いかけてきたつもりです。ウクライナの人もある日突然、鉄砲の弾が飛んでくるわけですから。許せません」
3年程前に移住してきたという広田さん。この島で芸術祭を開こうと思った理由。それは?
(広田さん)
「もうそれは景色です。田島、横島の素晴らしさを見てほしいんです。瀬戸内海はみんな美しいというけれど、これくらい美しい瀬戸内海があるだろうか、というくらい好き。とにかく瀬戸内海を代表するような場所だと思います。穏やかで静かで人がいい。少なくとも福山の人には来てほしいですね」
こうした広田さんの島への熱い思いから始まった芸術祭。島の良さをより感じるため、散策しながらアートを探すことが、この芸術祭の楽しみの一つです。島ならではの細い道を進んだところに会場が…。ほら、こんなところにも案内板が。
会場の一つ、ボラギャラリー。古民家を改装した画廊です。ここにも、様々な作品が並んでいました。お客さんも、島のアートと散策を楽しんでいたようです。
(観客)
「たまたまきょう、久しぶりに自転車に乗るかと言うことで内海に来たら、芸術祭のことを聞き、地図を見ながら1軒1軒回って。こういった港町だから入り組んでいるけれど、それがまた楽しいんです。内海の町にこんなところがあるんだと」
このボラギャラリーの奥にある蔵にも作品があります。2階に上がると…ひと部屋全部を使った作品が。太田琴さんの作品「此処」です。
(太田琴さん)
「この空間全てが作品ですよ、というようなことになっています。初めて去年の今頃に内海大橋を渡った時、すごく感動して。あの時内海大橋を渡った時に心が晴れた、感動した時の気持ちと、ここ(蔵)に入った時の気持ち、はっという気持、を一緒に表現したいなということで作りました」
若い芸術家の発信の場にもなっている芸術祭。そのきっかけを作ったのが、ボラギャラリーのオーナー、藤原俊彦さんです。島にある古民家を再生し、活用する活動を長年続けてきました。
(ボラギャラリーオーナー・藤原俊彦さん)
「文化的なにおいがする村に少しでもしたいというか。文化というが個人個人なら自分の趣味、好きなモノ、やってみたいもの、でいいと思う。そういうものをこの村に根付かせるひとつのきっかけになれば」
しかし、内海町の人口は、この20年で1000人以上も減少し、今年春には、島内の小中学校全てが閉校してしまいました。そうした中で、増えていく空き家。今回の芸術祭は、その活用も目的にしています。
(藤原さん)
「島の小中学校が全部廃校になったけど、それを悲しむということではなくて、新しい使い方ができるチャンス、むしろ、ここを起点に福山全体の文化レベルを上げようとみんな燃えてやってる感じがする」
広田さんの内海町への愛と、若い芸術家たちの力、そして、藤原さんの夢が結集して生まれた芸術祭なんです。
(藤原さん)
「ちょっと気がめいった時とか、遊びたいなという時に思い出してもらえる田島、横島にしたい。ここに来れば金がなくても遊べるところにしたい」
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