瀬戸内海も同様に、海がきれいになりすぎて「貧栄養化」が進んでいます。
きれいになりすぎるためか、温暖化による海水温度の変化によるものかそれ以外の原因などが重なり、プランクトンが大きく減少している可能性が指摘されています。
日本は海洋国家であり、石油、鉱物、食料などの資源が乏しいなか、海洋資源は他の国々から比較しても恵まれています。
海からの「恵み」を育み育てていく必要があると思います。(N)2022.7.28
2022年7月26日
【FNN】
富山に住む私たちにとって身近な存在の海。
いま、その海は様々な問題を抱えています。
近年、問題になっている海の「貧栄養化」について、長年海と関わる漁師や富山の海を研究する大学関係者を取材しました。
魚津市の青島沖で長年潜り漁をする古川奎司さん。
週に2、3回スキューバで海に潜り、サザエやアワビなどの貝類を狙います。
古川さんによりますと、この数年で、漁獲量に大きな変化が出ているそうです。
*記者「昔と比べて全然違う?」
*古川奎司さん「違う。5、6年前だったら、アワビが20枚とか30枚とれた。いまは、2人で(海に)入ったとしても、多くて6、7枚」
*記者「今日多くて何枚くらい?」
*古川奎司さん「1枚あるかないかじゃないか」
大幅な漁獲量の減少の理由は青島沖で起こっている「磯焼け」です。
磯焼けとは、海底の岩場にワカメなどの海藻が繁殖せず、魚の生息地や産卵場所となる藻場が減少することです。
海藻がなくなれば、海藻をエサとするアワビやサザエも数が減るため、これらを狙う古川さんには大きな痛手です。
この日は1時間海に潜り、収穫は小ぶりのサザエが50個ほど、アワビは獲れませんでした。
*古川奎司さん「殻ばっかり。身は一つもない」
磯焼けは、海水温の上昇、ウニなどによる食害など様々な原因が考えられますが、その原因の一つと見られているのが、海の「貧栄養化」です。
貧栄養化とは、簡単に言うと「海水がきれいになり過ぎている」ということです。
高度経済成長期に工業廃水などで汚染した海をきれいにしようと、国は1970年代から、汚染の原因となる窒素やリンの排出量を制限してきました。
その結果、水質は改善された一方、海の生き物に必要な栄養素である窒素やリンの海水に含まれる量が減り、魚や貝、海藻に影響が出ています。
富山大学大学院では、海の貧栄養化に関する調査を4年前から行っています。
魚津市のこの涵養田は、工業用や冬場の融雪に使う地下水を保全するために水が張られています。
大学院の研究グループがここで行っているのは、涵養田に張られた水がどれだけの栄養を蓄えて地面に浸透していくかを測る調査です。
院生たちは、涵養田内の5つのポイントで水を採取し、その場で水温や水素イオン濃度などを測定。
そして研究室に持ち帰り、腐葉土や生物の死骸など自然に由来して水に含まれた窒素やリンの量を測ります。
*富山大学大学院理工学教育部 片境紗希助教授「日本の海は、きれいになりすぎているのが現状。現状に合わせて政策、生活を変えていかなければいけないと考えている。その科学的根拠を出そうとしている。海の栄養分が、どんどん少なくなっている。それに対して自然由来で(栄養を)増やすのは、有効な対策になると思う」
今後、どのように自然由来の栄養素をもって豊かな海をつくりあげていくか。
研究の一層の進展が期待され、そのきっかけに富山の研究が生かされるか注目です。