【oceans.tokyo.jp】
2022.11.22
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働き手不足と魅力的な産業不足。日本の地方が陥っている負のスパイラルである。このふたつの課題を解決しようとするのが、アグリストの齋藤潤一さんだ。
農産物を収穫するロボットとAIを活用したスマート農業の開発で、農業を“儲かる”産業に変えることを目指す。
アグリストが拠点を置くのは宮崎県新富町。人口わずか1万6000人のこの土地で、ピーマンを自動収穫するロボットを開発している。
「生産者の方々と開いていた『儲かる農業研究会』で、多くの農場に共通する課題が、収穫する人材が足りないことだとわかりました。これまで収穫しきれず廃棄されてしまっていた分の収穫量が増えれば、それだけ収入が増える。儲かる農業への道筋のひとつが見つかりました」。
新富町で生産が盛んなピーマンに対象を絞り、ハウス内に設置したワイヤーを移動しながら、収穫を行うロボットを開発した。使用すると平均30%の収穫増が見込めるという。
地域の人々と二人三脚で事業に取り組む齋藤さん。実は、シリコンバレーで働いていた過去を持つ。転機は2011年の東日本大震災だった。
「それまで自分のスキルはお金を稼ぐ手段だと認識していました。しかし、震災直後に福島を訪れてその惨状を目にしてから、『スキルを地域や人のために活かせるのではないか』と思うようになりました」。
そうして始まったのが、同じく齋藤さんが代表を務める、持続可能な地域社会を目指す財団、こゆ地域づくり推進機構。その中で行われていた生産者との研究会から始まったのが、アグリストだ。
このふたつの組織を育て、描く未来がある。
「会社のIPOをひとつの通過すべき点だと考えています。人口1万6000人の町から上場企業が生まれれば、僕たちをロールモデルとして、全国各地の自治体でスタートアップへの投資が始まるはずです。
そんな事例が増えることで、おのずと地方が元気になっていくと思うんです」。
齋藤さんは、その試みを「風景を変える」ことと表現する。