【山形大学】
2022.12.08
本件のポイント
- 山形大学の研究グループは、ナスカ台地とその周辺部で、新たな地上絵を168点発見。
- 人間、ラクダ科動物、鳥、シャチ、ネコ科動物、蛇などの地上絵。
- 航空レーザー測量とドローンを活用した現地調査の研究成果。
- ナスカ市街地付近に2017年に設立された遺跡公園内に77点の地上絵が集中していることが判明。
概要
山形大学の坂井正人教授(文化人類学・アンデス考古学)らの研究グループは、ペルー人考古学者と共同で、人間、ラクダ科動物、鳥、シャチ、ネコ科動物、蛇などの地上絵168点を、南米ペルーのナスカ台地とナスカ市街地付近で新たに発見しました。これらは航空レーザー測量とドローンを活用した現地調査(2019年6月~2020年2月)、その後のデータ分析などによって発見されたもので、紀元前100年~紀元300年頃に描かれたと考えられます。このうち36点もの地上絵が、ナスカ市街地のすぐ近くのアハ地区で発見されました。この地区ではすでに合計41点の地上絵の存在が山形大学によって2014年と2015年に公表されたため、これらを保護するためにペルー文化省と共同で2017年に遺跡公園が設立しました。今回の発見によって、この遺跡公園には合計で77点もの地上絵が集中していることが判明しました。今回の研究成果は、AIを用いたナスカ地上絵の分布調査およびその保護活動に積極的に利用します。
詳しくはこちら(改訂版)をご覧ください。
背景
山形大学では、ユネスコの世界文化遺産「ナスカの地上絵」研究に取り組み、数多くの地上絵を発見するとともに、保護活動を推進してきました。現在、ペルー文化省から正式に調査許可を取り、ナスカ台地で学術調査を実施しているのは、世界で唯一、山形大学の研究チームのみです。2004年から2018年までに190点の動物や人間などの地上絵を発見しました。2012年にはナスカ市に「山形大学ナスカ研究所」を設立し、2015年にはペルー文化省と山形大学の間で地上絵の保護と学術研究に関する協定を締結しました。なお、この協定に基づき、山形大学が発見した地上絵を保護するための遺跡公園を2017年にナスカ市街地近くのアハ地区に設立しました。
研究手法・研究成果
航空レーザー測量によって得られた高解像度画像の分析、ドローンを活用した現地調査(2019年6月~2020年2月)、調査データの分析によって、ナスカ台地とナスカ市街地付近において168点もの動物や人間などの地上絵を発見しました。2018年までに発見した地上絵190点を加えると、これまでに358点もの地上絵を発見したことになります。発見した地上絵は、具体的には人間、ラクダ科動物、鳥、シャチ、ネコ科動物、蛇などです。これらの地上絵は、地表に広がる黒い石を除去して、下に広がる白い砂の面を露出することによって制作されたものですが、制作方法は2種類あり、線状に石を除去するタイプと、面状に石を除去するタイプに分かれます。今回発見された地上絵のうち、前者のタイプの地上絵は5点だけですが、後者のタイプの地上絵は163点もあります。後者は10m以下の小型の地上絵で、小道沿いに分布する傾向があります。
今後の展望
山形大学ではIBM T.J. ワトソン研究所と共同で、AIを用いたナスカ地上絵の分布調査を実施しています。今回発見した地上絵をIBMとの共同研究に活用することによって、地上絵の分布を正確に把握するとともに、その分布規則を明らかにすることを目指しています。またこうした研究成果を、地上絵の保護活動に役立てる予定です。
関連リンク
- 研究者情報ー坂井 正人 教授
- 山形大学人文社会科学部ホームページ