【弁護士ドットコム】
2023年01月16
ここは都内のどこか。ネオンきらめく繁華街や高層ビルから少し離れた住宅街だ。その一角に個人所有の小さな駐車スペースがある。
30代会社員の裕作は、旧知の仲の所有者から許可を得て、若い時分の淡い思い出にひたりながら、その場所で紙たばこを吸うことがあった。
先日のことである。寒空の下、いつものように紙たばこで一服していたところ、見知らぬ通行人に「私有地でも喫煙禁止だ。条例違反だぞ」と詰め寄られた。
とっさに反論したが、通行人は「喫煙者なのに知らないのか?」「勉強不足だな。調べてからモノを言え」と重ねてくるので、不安になってしまった。
はたして、私有地も「路上喫煙禁止」の対象なのだろうか。
●私有地での喫煙は「規制対象外」だが・・・
東京都の特別区(23区)は、それぞれ路上喫煙に関する条例をさだめている。今回、千代田区、港区、中央区、文京区、新宿区について調べてみた。
結論からいえば、いずれも路上喫煙に関する条例の内容は微妙にちがっているが、私有地での喫煙は規制対象ではない。ただし、暗黙の「配慮」がもとめられるようだ。
たとえば千代田区の場合、公共の場所(区内の道路、公園、広場など)で、紙たばこや加熱式たばこを喫煙した場合、過料(2000円)の対象となる。
上記のように、私有地での喫煙は規制されていないが、通行人など、周りの人に迷惑をかけないように声かけすることがあるという。
●苦情が寄せられて対応に苦慮する港区
六本木などの繁華街をかかえる港区の「みなとタバコルール」では、公共の場所(区内の道路、公園、児童遊園)で喫煙してはならない(過料なし)とされている。
また、公共の場所以外で喫煙する場合、その場にいる人たちに煙を吸わせることがないよう配慮しなければならない。
上記のように私有地は対象外なのだが、区民から苦情が寄せられることもあり、区としては対応に苦慮しているという。
なお、私有地であっても建物と道路のきわなど、公道に煙が流れてくるような場合、ルール違反となるそうだ。
●お互いの歩み寄りが必要かもしれない
中央区と文京区は、指定喫煙所以外の「公共の場所」で喫煙することを禁止しているが、やはり過料は定められていない。
一方、私有地であっても、区道など公共の場所に面して煙が流れてくるような場合は「迷惑にならないように(喫煙者には)協力してほしい」というのが本音だ。
都内随一の繁華街がある新宿区は、定められた場所を除いて「路上喫煙」が禁止されている。過料の規定はない。公園などは他人に受動喫煙させないよう努めることがもとめられている。
結局のところ、(精神的に)お互いが歩み寄る必要があるといえそうだ。
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