【news-postseven】
2023.02.24
日本の水産業の漁獲量が減少するなか、海や川から離れて魚介を育てる陸上養殖に近年、異業種からの参入が相次ぐ。市街地でも行なえる、寄生虫が発生しにくい、安定供給が可能……とメリットが多く、未来の食糧問題を解決する切り札の一つだ。最前線の現場をレポートする。
三井物産から9億円出資を得た研究者たちが丘の上で魚を育てる
●FRDジャパン トラウトサーモン「おかそだち」
見晴らしのいい丘にポツンと佇む工場のような建物。FRDジャパン(さいたま市)の実証実験プラント(木更津市)を訪れると、縦横無尽に張り巡らされた濾過用パイプのもとで数千匹のサーモンが泳いでいた。
陸上養殖には飼育水を海や川などから取水する「かけ流し式」と、濾過・浄化して水道水や地下水などを循環させる「閉鎖循環式」がある。ベンチャー企業である同社は独自の閉鎖循環式技術を誇り、「海に依存しない陸上養殖」の世界的な普及を使命に掲げる。バクテリアを活用した高度な濾過技術に注目した三井物産から出資を受け、トラウトサーモンの陸上養殖を開始。年間生産量は30トンだが、千葉県内に建設予定の商業プラントでは3500トンを目指す。
「水替えをほとんど必要としない、地球に優しいサステナブルな養殖システムです。絶えず濾過されている約15℃のきれいな水で育ちます。海や川からのウイルスや寄生虫の侵入リスクがないため、抗生物質は一切使わず、生で安心・安全に食べられます」(事業開発・マーケティング担当の宮川千裕氏)