昨日のNHKの報道から興味深いニュースをご紹介させていただきます。
高齢化が引き続き進んでいる中、全国各地で整備・運営されている特別養護老人ホーム。
東京や大阪などの大都市圏や、県庁所在地等では高齢者が増え続ける見込みで、特養の待機者ニーズも高い様ですが、地方の過疎地では高齢者の減少傾向が始まり、特養のベッドにも空きが出始めているとの事です。
福山市や広島県ではどうなのか、次期介護保険事業計画を策定する時期でもあり、介護報酬や医療の診療報酬、そして障がい福祉サービス費の同時改定も控えており、ニーズを適格に把握しておく必要があります。
NHKの特集ては、専門家が、事業者の連携や法人統合等が必要となる地域が増える、との見解を述べています。
3月の市議会代表質問でも触れた内容であり、福山市の状況を分析してみたいと思います。
岡崎まさずみ
【NHK】
2023年4月19日
入所を待つ待機者が多く「なかなか入れない」と言われてきた介護施設、特別養護老人ホーム。
都市部を中心に依然、多くの高齢者が入所を待つ一方で、人口減少が進み、高齢者の人口も減り始めている地域では、ベッドの空きが出るのを懸念する施設も出てきています。人口減少時代の「特養」の実情をQ&Aでまとめました。
Q1.「特養」ってなかなか入れないのでは?
特に大都市部では、入所を希望する高齢者が依然として多い状態が続いています。厚生労働省は特別養護老人ホームへの入所を希望する人について3年に1度調査していて、2022年4月時点の調査では全国1018の自治体から回答がありました。
それによりますと、入所希望者はおよそ27万5000人でした。前回、2019年の調査からおよそ5万人減少していますが、依然多くの人が入所を待機している状態です。
このうち全国で最も多い2万3694人に上るのは東京都で3月下旬、板橋区の住宅地では新たな特別養護老人ホームの建設が進められていました。
建設しているのはこれまで隣の埼玉県で特別養護老人ホームなどを運営してきた社会福祉法人で、今回初めて都内に進出したということです。
施設を運営する社会福祉法人「大樹会」の井上直樹理事長は「東京都がとにかく足りないと聞き、埼玉に一番近い板橋区だったので手を挙げました。この施設で良かったと納得してもらえるような施設づくりをしていきたい」と話していました。
Q2. 人口が減る地域では?
人口が減少する地域の特別養護老人ホームの中には、今後の経営に懸念を抱えているところもあります。およそ7500人が暮らす石川県穴水町の人口は過去10年間でおよそ20%にあたる2000人減少し、このうち75歳以上の後期高齢者もおよそ150人となりました。
町にあるただひとつの特別養護老人ホーム「能登穴水聖頌園」では入所希望者が10年前には70人ほどいたということですが、2022年4月時点の町の調査では15人となりました。
施設では、今後も入所を申し込む高齢者は減少すると見込んでいて、ベッドに空きが出るようになって経営が維持できなくなった場合、経済的に民間の施設には入れない高齢者が行き場を失うおそれもあるとして懸念を強めています。
施設長の殿田和博さんは「経済的に強くない方もいらっしゃいますし、町の教育や医療と同じインフラの一環として重要で、次の行き先のない田舎で施設がなくなると、かなりのショックだと思います。特養だけでなく介護施設は本当に過渡期に来ている」と話していました。
Q3. 後期高齢者の減少、具体的なデータは?
高齢者の人口は地域ごとにどのように推移してきたのか、NHKは住民基本台帳のデータを基に5年ごとの変化を分析しました。特別養護老人ホームの入所者の92.9%を占める、75歳以上の「後期高齢者」の人口が減少した自治体を見てみます。
それによりますと、2007年から2012年までの5年間に後期高齢者の人口が減少した自治体は全国では44でした。
それが、2017年から去年(2022年)までの5年間では、後期高齢者の人口が減少した自治体は672と、全体の4割近くを占め、2012年までの5年間と比べ15倍以上に増えました。
地域別では、北海道や東北、北陸、山陰、四国、九州などの山間部を中心に減少した自治体が広がっています。
さらに今後どうなるのか、後期高齢者の将来の推計値も分析しました。国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとにまとめている「将来推計人口」で、最新となる2017年発表のデータで後期高齢者の人口が減少する自治体を見てみます。
それによりますと、2040年までの自治体数1371は、今回分析した推計値の無い福島県の自治体を除く全国1682の自治体のうち8割以上にあたり、東京などの大都市や県庁所在地など地方の都市部を除くほとんどの自治体で減少している状況となっています。
Q4. 今後どうなる? 各自治体の見込みは
前述した厚生労働省の調査で、入所希望者の今後の見込みについて自治体に尋ねたところ、回答は以下のような内訳になりました。
▼「大きな増減はない」307自治体(30.2%)
▼「減少する」75自治体(7.4%)
▼「わからない」233自治体(22.9%)このうち「減少する」と答えた自治体に主な理由をたずねたところ、最も多い50の市町村が「要介護の利用者数が減少していくため」と答えました。
厚生労働省によりますと、大都市部では依然多くの高齢者が入所を待つ一方で、過疎地域などでは高齢者の人口が減り始め、介護が必要な人の数も減っていることが背景にあるということです。
Q5. 高齢者人口の減少 地域への影響は?
高齢者の減少は、地域の経済にも影響を及ぼしています。
石川県穴水町の中心部にあるスーパーでは客の8割を高齢者が占めていますが、最近は、いつも来ていた客が施設に入ったり亡くなったりといった話を聞くことが増え、客足や売り上げは年々減少しているということです。
店では従業員の数を減らし経費を削減するなど経営努力を続けていますが、限界を感じていると言います。
スーパーの社長、谷口順也さんは「人口減による売上減少は仕方ないと割り切りながらも、本当に来年やっていけるかなというのが正直なところで、当面存続していくことに精いっぱいです」と話していました。
また、第三セクター「のと鉄道」の駅前にある衣料品店も、売上はおよそ15年前の半分近くに減少したと言います。
去年(2022年)からことしにかけての冬の間だけでもいつも来ていた古くからの客の3人が転倒して骨折したために入院したということです。
住み慣れた地域を離れて入院したり施設に入所したりする高齢の客が増えるのに伴って、この店では介護を受ける際に脱いだり来たりしやすい前開きの下着やシャツが多く売れるようになっているということです。
店では、客が急に入院して遠方で暮らす家族がすぐ駆けつけられずに必要な衣類を用意できない場合など、病院に新しい下着などを届けることもあり、長年の客とのつきあいで服のサイズや色の好みも知っているため迅速に対応できるということです。
店長の小林英夫さんは「地域でお互いの人間性までわかるような付き合いをしてきたので、こういった対応ができると思っています。この店を必要とする人がいるかぎりは、細々とでも続けていけたらと思います」と話していました。
Q6. 今後懸念される状況について 専門家は?
今後懸念される状況について、介護や人口問題などに詳しい政策研究大学院大学の小野太一教授に聞きました。
小野教授は「高齢者の人口は国や都道府県の単位で見ると今後も増える想定だが、特定の地域ごとに見るとすでに減っている地域があり、もう少し細かな視点で特別養護老人ホームなどの持続可能な策を検討する必要がある」と指摘しています。
その上で「今後、経営を維持できない介護施設が同じ地域で複数発生して、住民が必要なサービスを受けられなくなるといった事態は避けなければならない。地域の医療機関については将来の人口減少を見据えて異なる法人間での再編や統合の調整が進められたが、介護の分野でも地域によっては検討の必要があり、国や県が主導して提示していく必要がある」と指摘しました。