【kansensho】
2023年6月22日
国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年23週(6/5-6/11)によると、溶連菌感染症患者の定点あたり報告数は1.67。前週と比較すると、5%ほど増加しています。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(一般には溶連菌感染症と言われる場合が多いです)は、A群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる感染症です。菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こすことが知られています。主な症状としては、扁桃(へんとう)炎、伝染性膿痂(のうか)しん(=とびひ)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などがあります。扁桃炎の症状としては、発熱やのどの痛み・腫れ、化膿、リンパ節炎が生じることがあります。舌がイチゴ状に赤く腫れ、全身に鮮紅色の発しんが出ることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂しん(とびひ)の症状としては、発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。
適切に治療すれば後遺症がなく治癒しますが、治療が不十分な場合には、発症数週間後にリウマチ熱、腎炎などを合併することがあります。まれではありますが、敗血症性ショックを示す劇症型もあります。
警報が発令された広島県では…
広島県では、県の北部で溶連菌感染症の患者報告数が警報開始基準の「定点辺り8」を超え、県内での患者報告も増えていることから、2023年6月15日に、「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)警報」を発令しました。
広島県新型コロナウイルス感染症対策担当によると、「流行警報の発令は、2015年10月15日以来、8年ぶりの警報発令となりました。溶連菌感染症が増えていることは、事実ですが、新型コロナウイルス感染症が5類になったこととの関係は不明です。もともと、季節的に増加する時期なので、広島県としては、手洗い・うがいなどの予防をお願いしています」としています。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「溶連菌感染症は、例年、6月辺りに流行を迎えます。例年と比べ、大きな流行という訳ではありません。しかし、溶連菌感染症が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診することを勧めます。溶連菌感染症には、様々な合併症があり、敗血性ショックを示す劇症型や糸球体腎炎などを発症する場合もあります。処方された抗菌薬は必ず飲み切ってください」としています。
感染経路
主な感染経路は、飛沫感染及び接触感染で、食品を介して経口感染する場合もあります。学童期の子どもが多く感染するということで、家庭内や学校などでの集団感染が多く見られます。
溶連菌感染症の予防法は?
予防については、ワクチンは開発されていません。飛沫感染や接触感染を防ぐために、手洗いなどの一般的な予防法を実施することが大切です。また、治療法については、発症した場合適切な抗菌薬で治療すれば、多くの場合は後遺症もなく治ります。
広島県新型コロナウイルス感染症対策担当
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏