【gendai】
2023.08.06
「壮大なる消耗戦」の様相を呈してきたこの戦いを詳細に分析し、トヨタの課題を炙り出し、強いトヨタを取り戻すには何が必要かを論考。さらに、世界の自動車産業がこの先に進む、未来の姿も提示する。日々、大胆に進む「100年に一度の変革」を中西孝樹がダイナミックに、精緻に描く話題の書『トヨタのEV戦争』(講談社ビーシー/講談社刊)の中から一部を抜粋してお届けする。(全12回中12回目)
■『トヨタのEV戦争』記事一覧
伝統的自動車メーカーの窮地
EVシフトを受けた世界の自動車産業の勢力図には、どんな変化が起こるのだろうか。現在の筆者の予想に基づけば、中国とインドの自動車メーカーの台頭が予想され、米国と日本車メーカーの後退が懸念される。
日本車メーカーの世界シェアは2030年には29%へ若干の減少に留まると見ている。これは、新興国で成長が続くトヨタとスズキの市場シェアが上昇する予想が含まれているためだ。現段階では、トヨタはEV戦争に最終的に勝利できるという前提に立っている。万が一、2026年からのBEVファクトリーが不発に終われば、日本車メーカーのシェアダウンは一段と大きくなるリスクがある。
中国と米国市場における苦戦が予想されるホンダや日産のシェアダウンは避けられそうにない。日本車メーカーの中でのシェア配分はトヨタが37%から41%へ、スズキが10%から14%へ大きく伸びるが、ホンダは19%から16%へ、日産は17%から13%へ後退する予想だ。
先進国での台数成長は難しく、製品構成を高めバリューチェーンやリカーリングビジネス(継続的に提供するサービスから得る収益)で稼ぐ構造にいち早く変化することもこの背景にある。
より大きな構造変化は、新興自動車メーカーの著しい台頭にある。トヨタやGMのような伝統的自動車メーカーと新興自動車メーカーは明暗が分かれそうだ。新興勢力は2020年には世界の1%のシェアしかなかったが、2030年に世界市場の8%、2035年には15%程度まで拡大する公算である。
その成長をけん引するのがテスラやアップルカーというベンチャーと異業種参入組の新興自動車メーカーだ。
もう1つの存在
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