【中国新聞】
約40年前に広島県福山市が市内の無人島、宇治島に放したクジャクが激減している。近年の生態調査では1羽の確認にとどまり、直近ではゼロだった。島の環境美化に取り組む団体は「上陸したイノシシが卵を食べているため繁殖できていないのでは」とみている。
島を管理する市公園緑地課によると、調査は市から委託を受けた福山観光コンベンション協会が月1回程度実施。浜辺に餌を置いて約1時間、クジャクやシカが現れるかを確認する。2023年度は5月と12月に1羽を確認し、直近の今年1月はゼロだった。
毎年7月の海の日に島の海岸で清掃イベントを企画する「瀬戸内海宇治島クラブ」の大土井誉人さん(50)は「10年近く通っているが、ここ1、2年でクジャクの姿を見かけなくなった」と話す。「自然の中で淘汰(とうた)された結果で仕方ないのかもしれないがさみしい」と話す。
島内ではイノシシの姿やふんも確認されている。会員たちは「泳いで島に来たイノシシがクジャクの卵を食べて数が減ったのでは」とみる。
市や過去の中国新聞の記事によると、クジャクは福山城の公園で飼育していた。1976年には約450羽に増え、野犬に狙われたり「鳴き声が授業の妨げになる」などと近くの学校から抗議が寄せられたりしたため、同市熊野町の福山ファミリーパークに移した。市は85年、自然に返すため50羽を公園にいたシカ5頭と一緒に島に放ったという。
クジャクの減少について同課は「原因は不明」としており、月1回の餌やりと生息調査を続ける。過去には上陸した男性がシカに蹴られてけがをしたこともあり、「上陸は推奨していない。けがや感染症の防止のため動物には近づかないでほしい」と呼びかけている。