東京オリンピック・パラリンピックでみんなが注目する、メダル。実は「リサイクルを進めよう」というメッセージが込められています。
中学入試に、メダルについてのこんな問題が出ていました。
問題に挑戦!
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東京2020オリンピック・パラリンピックで選手に贈られるメダルの原材料が、どのように集められたのかを知っていますか。今までは金・銀・銅の天然鉱物が主な原材料でしたが、今回は初めてリサイクル素材だけを原材料としてメダルを作るという内容の「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」によって、5千個以上のメダルに必要とされる、およそ金32kg、銀3,500kg、銅2,200kgが確保できたそうです。
(リサイクル素材だけを原材料としてメダルを作るという内容の「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」に下線)
下線部について、何をリサイクルしたものですか。都市鉱山の意味をあきらかにした上で、20字以内で答えなさい。
(早稲田実業学校中等部 2021年)
携帯電話などを集めたというニュースを覚えている人もいるのではないでしょうか?
正解は、「使われなくなった小型家電の部品」です。
2年かけて、必要なメダルおよそ5000個分を確保しました。
都市鉱山 さまざまな金属が
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都市鉱山からリサイクルする意義について、メダルプロジェクトを提唱したひとりで、金属のリサイクルに詳しい、原田幸明さんに聞きました。
かなりの量の金・銀・銅が集まったと思いますが、それだけ都市には眠っているということでしょうか。
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「まだまだ一部ですね。今回は、ほんの一部を掘り起こすことができたということになると思います。銀が多いのは、金メダルは、銀のメダルの上に金メッキをするからです」
小型家電などは、その役目を終えても、リサイクルできる、さまざまな金属を秘めている。
それが、名前の由来です。
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原田さんによりますと、たくさんの金属などが使われているんです。
例えば金は、心臓部にあたる「プロセッサー」などで、高い性能を支えています。
「スマートフォンは、都市鉱山の塊みたいなものです。いちばんわかりやすいのは、金メダル1個のメッキに、どのくらいスマートフォンが使われているかということですが、大体200個です」
都市鉱山 眠れる資源を生かせ
「大体、日本の年間での需要の20年から40年分は、大抵の金属資源に関してはあります」
「金」でみてみると、国内で、使われなくなると見込まれる小型家電に含まれる量に対し、リサイクルされているのは、8%ほどだということです。
日本は、資源に乏しいと言われていますが、見方を変えると、自国の中にいっぱい眠っているということですね。
「『資源が乏しい』というのは間違いで、『天然資源が乏しい』のです。世界中から資源を集めてきて使っているので、自分たちの手元には、実はいっぱい残っているんですよ」
都市鉱山 環境負荷を減らせ
天然の鉱山から金属を採ることが、実は環境に悪影響を与えているからです。
「天然の資源の採掘は、量的には大変な資源(鉱石)を消費するんです。例えば金は、1gを採るのに、1t以上の資源(鉱石)が要ります。金の鉱石という石があるとすると、金は1gしか入っていないんです」
「処理しなければいけないけれど、安くするために、どこかに埋め立て場をつくって、有害物質と一緒に捨ててしまうこともあります」
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「集めたものは、全部何かに使われている。廃棄物にしないで生かされています。例えば、スマートフォンのガラスはメダルになりません。メダルにならないけれど、セメントの中に入れて再利用しています。そういうふうにして、廃棄物を出さない方式で日本は処理できるんです」
プラスチックの部分とか、リサイクルするより捨てたほうがよっぽどコストがかからないのではないかと想像してしまいますが…
「捨てるということは、経済的には安いかもしれませんが、その環境での処理まで経済に入れて考えたら、実は高いコストを、誰かが別で払っているんです」
都市鉱山 メダルに込めた思いとは
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都市鉱山からのリサイクルの必要性は、これからますます高まると、原田さんは言います。
再生可能エネルギーを生み出す太陽光パネルには、銀が欠かせませんし、送電用のケーブルには、銅が欠かせないのです。
「金・銀・銅は、いちばん電気を流しやすい物質なんです。だから、『カーボンニュートラル』で、再生可能エネルギーになったら、金・銀・銅が、いちばん必要なんです。身近にある資源を使い、有害物を出すようなものをきちんとリサイクルで処理できるようにしてほしい。この2つが、今度のオリンピックのメダルに込められて、レガシーとして伝わっていくことを期待しています」
その理由には、携帯電話のように小さいものは、邪魔にならないのでしまいこんでいる人が多い、ということがあるそうです。
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都市鉱山に眠る資源をもっと生かすためにも、こうしたものをリサイクルに回してほしい、と原田さんは話していました。
オリンピックでアスリートの胸に輝くメダルを見たら、「都市鉱山」、このことばを思い出してみてください。
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