持続可能な農業として、今、注目されているのが、野菜と魚を同時に育てるという発想。
その最前線を取材した。

ポイントは「バランスのいい循環」。

神奈川・藤沢市にある温室「湘南アクポニ農場」。

中に入ると、水槽の中では、ニシキゴイが泳いでいる。
ところが、その上には、みずみずしい緑色の野菜が。

魚と野菜が、なぜ同じ空間に?

実は、野菜を育てる秘密が、“魚”にある。

株式会社 アクポニ代表取締役・濱田健吾さん「魚にエサをやると、魚がふんをします。そのふんを植物の肥料として(植物を)育てて、植物の力できれいに浄化された水が、また魚の水槽に戻るという、“循環型の農業”になっています」

“魚が植物を育て、植物が魚を育てる”、持続可能な農業として注目される「アクアポニックス」。

その仕組みを説明すると、えさを食べた魚のふんを微生物が植物の栄養に分解、その栄養豊富な水で植物を育てる。

さらに、植物の浄化作用できれいになった水で魚を育てるので、水を交換する必要がない。

魚を育てながら、野菜を育てるアクアポニックス。

さらに…。

濱田さん「LEDライトで植物を育てています。室内で育てる想定ですね」

土が不要で、スペースがあれば家庭でも始められる。

濱田さんは、レタスやバジルなどの葉物野菜を栽培。

水槽では、ニシキゴイや食用の魚のテラピア。
オニテナガエビなど、淡水の生物を育てている。

濱田さん「(メリットは?)1つが電気代が安くなる。1つが肥料の利用効率が上がる。3つ目が節水できるということ」

さらに、ITを利用したスマート農業も展開。
室内にはウェブカメラを設置。

水槽にもカメラを設置して、離れた場所から野菜や魚の生育状況が確認できるほか、作業データを記録するスマホアプリを開発し、効率的な生産管理に役立てている。

農業は、まったくの未経験だった濱田さん。

ところが、ネットで見たアクアポニックスの理念に共感。
アクアポニックスが盛んなアメリカに渡って研さんを積み、神奈川・藤沢市に研究施設を開いた。

栽培された野菜は、地元のこども食堂に提供されている。

長後こども食堂代表・高見広海さん「水耕栽培なので、(野菜に)泥がついていないのは、すごいメリットで、処理がしやすい」

こども食堂の利用者「葉物野菜を自宅で食べることも少なくなり、値段も高かったりするご時世なので、うれしいです」

SDGsの観点からも、その取り組みが注目されるアクアポニックス。

濱田さんは、さらに広大なスペースを確保して、2022年にも、アクアポニックス産の野菜や魚を市場に流通させたいという。

【FNN】