【ナゾロジー】
2022.05.30 MONDAY
車で道路を走行していると、地域によってはアスファルトがひび割れたり、ボロボロになったりしたまま放置されているのに気づくかもしれません。
交通事故のリスクを減らすには、アスファルトの早期補修を徹底するだけでなく、アスファルトの耐久性を向上させる必要もあるでしょう。
この点で、オーストラリア・ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT University)に所属する道路エンジニアのフィリッポ・ジュストッツィ氏ら研究チームは、アスファルトを2倍長持ちさせる新しい配合を発見しました。
廃タイヤから作られるリサイクルゴムを混ぜることで、紫外線による劣化を軽減させられると分かったのです。
研究の詳細は、2022年3月18日付の学術誌『Journal of Cleaner Production』に掲載されました。
目次
アスファルトが劣化する原因は?
現在、日本を含む世界の多くの地域では、道路がアスファルトで作られています。
そしてこの道路用のアスファルトは、正式には「アスファルト混合物」と呼ばれます。
その名前のとおり、アスファルトに骨材(砕石、砂)や石粉を混ぜることで強度を増しているのです。
このアスファルト混合物にはいくつもの種類があり、素材や割合を変化させることで、有する特徴も変わってきます。
例えば、積雪寒冷地域ではタイヤチェーンによる摩耗に対処するため、摩耗抵抗性の高い素材や配合が採用されてきました。
では、アスファルトの耐久性を全体的に高める方法はあるのでしょうか?
アスファルトが劣化する原因には、先ほど挙げたチェーンによる摩耗だけでなく、車の荷重、雨水、温度変化、紫外線なども該当します。
特に降り注ぐ紫外線は、ほぼすべての道路に共通する劣化要因だと言えます。
そこでジュストッツィ氏ら研究チームは、紫外線ダメージを軽減する配合を探すことにしました。
次ページ道路を長持ちさせる秘訣は「廃タイヤ」を混ぜることだった
道路を長持ちさせる秘訣は「廃タイヤ」を混ぜることだった
研究チームは、アスファルト混合物の耐久性を高めるために「ゴム」を採用しました。
廃タイヤなどをリサイクルしたゴムをアスファルトに混ぜることで、紫外線へ耐久性を高めたのです。
ジュストッツィ氏はこの点を次のよう説明しています。
「リサイクルゴムを道路の最上層に追加すると、劣化が遅くなると判明しました。
ゴムが道路の日焼け止めとして機能してくれるのです」
もちろん、廃タイヤから得られたゴムを適当に混ぜるわけではありません。
研究チームはアスファルト混合物における最も効果的なゴムの濃度も検証したのです。
実験では、さまざまな濃度(7.5%、15%、22.5%など)でゴムがアスファルトに混ぜられました。
そして完成した混合物を特殊な機械に入れて、高レベルの紫外線を1カ月半照射し続けました。
これは通常の道路が浴びる1年間の紫外線量に相当するとのこと。
変化の様子を観察した結果、ゴム濃度を18~22%にすると、紫外線に対して高い耐久性を示しつつ、荷重など、他の耐久性も向上すると分かりました。
研究チームは、「このバランスで作られたアスファルトは、従来のアスファルトと比べて、紫外線ダメージが50%低減されており、これまでの2倍長持ちする」と述べています。
ゴムを混ぜるだけで、アスファルトの耐久性が格段に向上するのですね。
また廃タイヤを利用できる点にも大きなメリットがあります。
現在多くの国が、環境破壊の拡散を防ぐためゴミの輸出規制を行っています。
オーストラリアでは中古タイヤについても輸出規制が敷かれているため、国内でリサイクルする必要に迫られています。
このため地域によっては、行き場を失った廃タイヤが山積みになっているところもあるようです。
今回の新しい発見は、道路の耐久性を向上させるだけでなく、廃タイヤのリサイクル問題も解決できる可能性があるのです。
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