【毎日新聞】
【上市町(ロキテクノ富山)-福山市・倉敷市(JFE西日本)】五回裏福山市・倉敷市2死一塁、田中が逆転の2点本塁打を放つ=東京ドームで2022年7月20日、中川祐一撮影
第93回都市対抗野球大会は第3日の20日、東京ドームで1回戦があり、3年ぶり11回目出場の福山市・倉敷市・JFE西日本が、初出場の上市町・ロキテクノ富山を3―1で降して2回戦に進んだ。好球必打と言うが、甘い球はそう来ない。逆転2ランの裏には、相手を足で揺さぶるしっかりとした伏線があった。
自身の10年連続出場を祝福する逆転2ランを放った福山市・倉敷市の3番・田中友博は「速い球に力負けしないようにと考えていた」と五回のアーチを振り返る。狙い球は直球一本だったが、その配球の読みをアシストしたのは一塁走者の“足”だった。
序盤は、初出場となる上市町の先発右腕・飯塚亜希彦に手を焼いていた。140キロ台中盤の直球に加え、キレのあるスライダーや、カウント球にも勝負球にもなるフォークに的を絞りきれず、一回に先制点を奪われると、反撃の糸口をつかめずにいた。
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【上市町(ロキテクノ富山)-福山市・倉敷市(JFE西日本)】五回裏福山市・倉敷市2死一塁、田中(手前)に2点本塁打を許し、肩を落とす上市町の先発・飯塚=東京ドームで2022年7月20日、猪飼健史撮影
きっかけは三回1死から四球で出塁した鳥井凌だ。50メートル走6秒0の俊足を生かして、塁上ではけん制をもらい、盗塁のそぶりも見せる。山下敬之監督は「バントだと試合展開が固まるので、試合を動かしたい狙いがあった」。得点にこそ結びつかなかったが、走塁で揺さぶる狙いを相手チームに植え付けた。
五回2死一塁からの田中の左越えアーチの一塁走者も鳥井だった。「(相手バッテリーは)走者を注意してくるので、田中さんが真っすぐを張っていた」と鳥井。ホームランの際は盗塁を狙い、スタートを切っていた。
「けん制は入れつつだったので盗塁への怖さはなかったけど、あの1球は悔やまれる」と上市町の捕手・黒田翼は悔しがる。得点圏に走者を進めることを自然と嫌がるように仕向けていたことが、上市町バッテリーに直球を投げさせ、中国2次予選で無安打に終わっていた田中の思い切りの良さも生み出した。
1点リードの七回1死三塁の場面では、2球目で鳥井がスクイズの構え。力んだ飯塚のボールは大きくそれて暴投となり1点を追加した。待てのサインながら、わざと早めにバントの構えをした鳥井は「監督の意図が分かっていたので揺さぶることができた」と、してやったりの表情だ。
安打数は上市町の8安打に対して福山市・倉敷市は6安打。しかも内野安打や相手のミスに助けられての安打も多かった。「もうちょっと本当は打たなきゃいけないけど、初戦なんで上出来です」と山下監督。初出場チームに試合巧者ぶりを見せつける勝利だった。【藤田健志】