【タウンネット】
2022.09.05
2022年で築城から400年を迎えた広島・福山市の「福山城」で11月5日、お城らしからぬ催しが行われる。
「デニム商談会in福山城」だ。
その名の通り、デニムに関する商談を行うイベントで、かつて風呂場として使われていた「湯殿」と、その場所から藩主などの到着を見極めていた「月見櫓」が会場になる。ここに海外のバイヤーを招聘し、国内随一のデニム産地・福山の事業者が作ったデニムを見てもらおうというのだ。
読者の皆さんも、きっと思ったことだろう。「なぜ、城で?」「城のどこで、どうやって?」と。
福山市には中・四国最大級の展示フロアを持つコンベンション施設「広島県立ふくやま産業交流館(ビッグ・ローズ)」のような、より商談会に適しているだろう場所もある。
それなのにわざわざ福山城で実施する理由は、何のだろうか。
Jタウンネット記者が8月26日、商談会を主催する福山市産業振興課の職員に話を聞いた。
海外バイヤーの心をつかむ作戦も
福山市が「デニム商談会in福山城」を行うのは、今回が初めて。その目的は福山デニムの魅力を発信することだけでなく、海外における「福山」の認知度向上も目指しているという。
「海外からバイヤーの方がいらっしゃるので、インパクトのある福山城での開催は意義のあるものです」
と産業振興課の職員は語る。
海外から来る人に市をアピールするための「作戦」も立てられている。
バイヤーたちはまず、市の玄関口であるJR福山駅にやってくる。新幹線などでここに到着すると、すぐ近くで城が待っているのだ。
その出逢いだけでインパクトは十分すぎる。海外から来たバイヤーたちは「日本に来たぞ!」と胸をときめかせるに違いない。しかも、その異国情緒あふれる城がまさに彼らの目的地なのだ。
「福山城を駅から見て、さらに実際に城内に来れば、バイヤーのテンションが上がるでしょう。そこから商談会に入ります」(産業振興課の職員)
たしかに、福山城でテンションを上げた状態で商談会に入れば、バイヤーもより前向きな気持ちで交渉に臨んでくれるかもしれない。
ハイテンションを維持して商談へ
そして、肝心の商談がどんな形で行われるかというと、月見櫓と湯殿の各会場に参加事業者が自社製品の展示などを行うブースを設け、バイヤーがそれを回るというものだ。
市のプレスリリースに掲載されていたブースの「イメージ画像」がこちらである。
畳の上に置かれた会議テーブルに、デニムクロスが掛けられている。城の中にこれがズラリと並ぶと思うと奇妙な気分になるが、それはそれとして非常にシンプルなスタイルだ。そのシンプルさにも意図があると産業振興課の職員は語る。
「月見櫓と湯殿は築城400年を迎えて改修を行いました。商談会が行われる時は、どちらも綺麗でベストな状態です。建物の良さを活かした雰囲気作りのためにも、ブースはシンプルなものにしようと考えています」
福山城を見て上がったバイヤーたちのテンションをキープするために、湯殿と月見櫓の建物の良さを生かすのは必須なのだ。
福山城をフル活用すれば、市の魅力を知ってもらうだけでなく、デニム関連事業者の後押しにもなる。まばゆいくらいにエキゾチックジャパンな作戦ではないか。
また、今回の商談に併せて前日の11月4日には生産現場視察ツアーも実施。生産現場の視察だけでなく、福山市の歴史や文化、食を楽しむ機会も用意している。
「商談会がメインですが、『おもてなし』もしたい」と産業振興課の職員。はたしてこの作戦は、狙い通りに海外バイヤーの心を掴むことができるのか。今後の福山デニムの展開に注目だ!
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