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【幻冬舎】昭和21年以降…日本文化が「日本人の前から姿を消した」という事実/2022年10月25日

【幻冬舎】

論説井上 敬康

消された日本文化

日本の歴史を学ぶうち、とりわけ戦後史を学ぶうちに、なぜ昭和21年以降、日本文化が日本人の前から姿を消していったのかわかるようになってきました。

皆さんには、日本人の前から「日本文化が消えた」などとは信じられないかも知れませんが、それは事実なのです。しかし正確に言えば消された文化とそうでない文化があります。戦前から連綿と続いている文化もありますが、戦後に一時的に消された文化もあるのです。

簡単に言えばその理由は日本が戦争に負けたからです。広島と長崎の原爆投下、そして前後してのソ連の参戦と毎日のように行われる非戦闘員のいる都市への空襲。今で言えば人道に反する罪とはっきり明言出来る連合軍の攻撃の前に日本はポツダム宣言を受諾していきます。そしてマッカーサー司令長官の厚木基地への到着後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は矢継ぎ早に占領政策を施行していきます。

それは何年も前から周到に日本人を研究した上に立っての巧妙なる政策でした。日本人を日本人たらしめる根本の日本文化を徹底的に破壊し、日本人の精神、言葉を変えれば「魂」を抜き取る政策でした。

そのために第一番に行われたことはと言えば占領後すぐに「武道禁止令」を発したことです。柔道・剣道を中心とした武道を公の場で練習することを禁じたのです。これは後で書きますが、戦前の武道をGHQは徹底的に恐れていたからです。

そして次に「刀剣類」すなわち刀は没収提出させられました。

さらには「神道指令」が昭和20年12月に発令されます。占領後4か月での発令です。これを見ても随分前に占領政策を研究していたことが分かります。「神道指令」によって皇室に関して教えること、学校での一切の神道行事は禁じられます。さらに、地元の歴史を学習したりすることも禁じられ、またマスコミで「神道講座」を行ったりすることも許されなくなります。同様に国民に対しては皇室に関する行事は変更され神道を国民行事の中から排していく政策が取られたのでした。とりわけ国民の精神的な拠り所であった靖国神社はドッグレース場にしようとまでしました。

(これは辛うじて止められましたが)ともかく日本人の根本的な基本的な精神文化を破壊することを第一としたのでした。

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私は昭和22年生まれですから敗戦後2年経ってから生まれた事になります。父は戦争中に陸軍軍医として南方方面へ派遣されていたと聞きます。敗戦をどこで迎えたのかあるいは収容所に入れられていたのかも聞いていません。

軍人の多くの方々は深い心の傷を負われたのか先の戦争の事を黙して語らずと言う方が多いようです。それはそうでしょう。GHQの占領政策で先の戦争は「侵略戦争」で軍人は「罪人」であるとマスコミを通じプロパガンダされているのですから、黙するしかなかったのです。

今の私なら分かります。私がもう少し早く戦後史をきちんと勉強すれば父ともっと話し合えたと残念でなりません。ともかく大人たちは黙って黙々と戦後の復興(東京なら焼け野原になった都市の再建に)に全力を尽くしていったのでした。

私が物心ついた5歳前後には私の住んでいた新宿もだいぶ復興していました。しかし今の新宿コマ劇場の土地はまだ空き地で草が茫々と生え、バッタを取った思い出があります。新宿駅東口のガード下には白衣を着た傷痍軍人さんたちの姿が何人も見えたものです。軍人さんがアコーディオンを奏でるその前には箱が置かれており、道行く人々はその中に幾ばくかのお金を入れていました。

映画は当時GHQ政策で時代劇は禁止されていて、上映されるのはもっぱら西部劇でした。しかし映画館はいつも満席で立ち見が普通であり、幼い私は父に肩車をしてもらって観た記憶があります。

もちろん占領政策の事など知りませんから西部劇に夢中になっていました。占領政策としてよく知られている3S政策によって日本人には「スクリーンとスポーツとセックス」が意図的に流されていました。サンフランシスコ条約が結ばれるまではそんな状態にあったのですがほとんどの日本人はそのことに気づかなかったのです。

今も野球がもてはやされていますが、それが実は占領政策の名残と言ったら野球ファンは怒るかも知れません。私もイチローさんも好きですし大谷選手の華麗なフォームには憧れますが、歴史の大きな流れから見る視点も大事だと思うのです。

日本をテーマに勉強すればするほどに色々の事がわかってきました。私が、無意識的に日本文化が嫌いになったのは実は戦後の歴史、とりわけ映画界・テレビ界にまで敷かれた占領政策によるものらしいことが見えてきたのです。そこまで見えてくれば私は”消された日本文化”を学ぶしかありませんでした。

※本記事は、2022年7月刊行の書籍『求道』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
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