【東洋経済】
2023/01/26
「貧困対策」というラベリングが親子を遠ざける
子ども食堂は「貧困対策」のためにあると思われがちだが、目的はそれだけではない。孤食の解消や地域の交流、地元の農産品を使った食育などさまざまだ。「貧しい子が来る場所」というレッテル貼りは、本当に支援を求める子どもたちの足を遠ざけてしまう。
地域に住むすべての子どもや高校・大学生、高齢者など、より広い層が活動に関わることで「気になる親子」にもアクセスしやすくなるのだ。
「前歯の半分溶けた子」が食堂開設のきっかけに
千葉市若葉区の「TSUGAnoわこども食堂」が毎週開いている「こどもカフェ」はいつも、子どもたちだけでなくボランティアの高校・大学生や主婦ら、30人ほどの人でにぎわう。
取材した日のメニューは、力うどんと焼き芋。子どもたちは食事を終えると、学生たちとトランプや割りばしでつくった鉄砲遊びに興じていた。
「てるさん」こと代表の田中照美さんは、帰ろうとする子どもたちに「これ持っていきなよ」と余った焼き芋を持たせ、1人ひとりに声を掛けて送り出した。
田中さんが子ども食堂を始めたのは2017年。「同じ地域で暮らしているのに、高齢者と子育て世代、障害者、学生などが互いにまったく交わらない」ことに違和感を抱き、各世代の「タイムライン」が交差する場つくろうとした。
もう1つのきっかけは、1人の男の子との出会いだ。
田中さんは食堂を開く前から、自宅を子育て中の親子らに開放していた。ある年のゴールデンウィーク初日、そこに出入りしていた小1の男の子が、午前7時にいきなり訪ねて来た。田中さんは「こんなに朝早く、何かあったのか」とパジャマ姿で玄関に行くと、男の子はスナック菓子の大袋を手に「今日遊べる?」。
拍子抜けしたものの家に上げて話を聴くと、母親は病気で床につく日が多いという。父親は仕事で忙しく、学校のない日は男の子に1000円を渡して出勤していた。スナック菓子は、その子の「朝ごはん」だった。