【東洋経済】
2023/01/14
フランスで抗議活動が激化、議会の解散・総選挙も
フランスで内政をつかさどるエリザベット・ボルヌ首相は1月10日、年金の支給開始年齢を現在の62歳から毎年3カ月ずつ延長し、2030年までに64歳に引き上げるとともに、満額支給に必要な払い込み期間を43年間に延長する期限を、2027年に8年間前倒しする政府の年金改革案を発表した。
年金改革はフランスの再興を掲げて2017年に史上最年少で就任し、昨年再選を果たしたエマニュエル・マクロン大統領が、2期目の集大成とする最重要の内政課題の1つだ。政府はこうした改革を通じて、2030年までに年金収支が120億ユーロ改善すると試算している。
歴代のフランスの政治指導者にとって、年金改革は頭痛の種だった。ジャック・シラク大統領の下で内政を取り仕切ったアラン・ジュペ首相は1995年、1カ月に及んだ労働組合のストライキや国民の抗議行動の末、年金改革案の撤回を余儀なくされた。マクロン大統領も1期目の任期中に、42種類に及ぶ年金制度の一本化を目指したが、国民の激しい抵抗と新型コロナウイルスの感染拡大への対応に追われたこともあり、改革は頓挫した。
労働組合は大規模ストや抗議デモを計画
各種の世論調査では、フランス国民の7~8割程度が政府の年金改革案に反対している。フランスは欧州連合(EU)諸国の中で、年金の支給開始年齢が最も低い国の1つだが、余暇を重視するフランス人にとって退職年齢の後ずれにつながる年金支給開始年齢の引き上げは受け入れがたい。
最終的な政府の改革案は、マクロン大統領が昨年の大統領選で掲げた支給開始年齢を65歳とする公約と比べて引き上げ幅を圧縮し、一部職種に例外を認めたほか、最低支給額を月額100ユーロ引き上げるなど、改革に反対する声に配慮した。
政府は昨年秋以降、主要な労働組合と協議を重ね、年金改革への理解を求めてきた。だが、過去の年金改革案に対して中立的な態度を貫いてきた穏健な労働組合ですら、年金の支給開始年齢の引き上げには反発している。