【朝日新聞】
2023年5月26日
可視光以外の「目に見えない光」の研究に取り組んでいる徳島大ポストLEDフォトニクス研究所(徳島市)は25日、「光」を用いた新たな通信方法の実験に世界で初めて成功したと発表した。次世代通信規格の「6G」に役立つ技術だとPRしている。
現在、スマートフォンで音声やメールなどをやり取りする場合、スマホと基地局の間は電気信号の「無線通信」、基地局―交換局―相手側基地局の間は有線ケーブルの「光通信」が使われている。「遅い」電気信号と「速い」光信号を接続部分で変換しなければならないことが、高速通信を妨げる要因になっている。
研究所が取り組んだのは、従来の電気技術を基にした無線通信に代わって、光と電波の中間に位置する「テラヘルツ波」で無線通信をする実験。「マイクロ光コム」という光に関する新技術を使って「速い」テラヘルツ波を発生させ、接続の課題を解決する通信に成功した。
2030年代に実用化が見込まれる6Gは、現行の5Gの10倍以上の300GHz(ギガヘルツ)以上の周波数が想定されているが、今回の実験では560GHzでの通信を達成した。
将来的には、現在の基地局―交換局の間の有線通信も、新たなテラヘルツ波の無線通信に置き換えることも可能だとしている。
研究所長の安井武史教授は25日に会見し、「日本の5G開発は世界の周回遅れと言われたが、光だと世界との差はない。これで光の高速性を生かせる通信が可能になる」と語った。世界的な開発競争の中で一歩先んじることができた理由として、「研究所には光コムの研究者もテラヘルツ波の研究者も通信の研究者もバリエーション豊富にそろっていて、同じ方向を向いてスピード感をもって研究することができた」と話した。
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