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5月 23, 2023
クラウド会計サービスの普及に伴い、スモールビジネスの現場でも経理処理の電子化が進んでいます。本日はそんな経理に関連する話題『電子帳簿保存法』。
略して『電帳法(でんちょうほう)』がテーマです。
実は事業を営んでいる人には全員関係があり、2024年の1月以降は守っていないと法律違反に。
そこで今回は、札幌の税理士法人フューチャークリエイトの財務/経営コンサルタント、居ケ内(おりかない)さんに、『電子帳簿保存法』についてわかりやすく教えていただきました。
電子帳簿保存法の基礎的な内容から、遵守すべきポイントや注意点、具体的に今すぐすべきことなどを、一緒に学びましょう!
(取材日:2022年10月・インタビュー:濱内勇一・文:原くみこ)
税理士法人Future Create (フューチャークリエイト)
対象になる人は誰?
濱内:本日は、電子帳簿保存法の話をお伺いしていきたいと思います。
原:まず、電子帳簿保存法について考える必要があるのは、どんな方ですか?確定申告を出す人全員というところでしょうか。
居ケ内:確定申告を出す方全員、ではありません。確定申告だとふるさと納税や相続を受けた方もいるので。
原:あ、なるほど!そうですね。
居ケ内:なのでくくりとしては、「事業」を行っている個人と法人が対象ですね。
原:売上高や、個人・法人の区別ではなく、『事業を行っているかどうか』という点が気にするポイントということですね。
そもそも電子帳簿保存法って何ですか
原:本当に基本の部分から教えていただきたいんですが、『電子帳簿保存法』って何ですか?
居ケ内:聞き慣れない言葉で、難しそうですよね。
電子帳簿保存法は、税法等で保存が義務付けられている帳簿や書類を、電子データで保存する際のルールなどに関する法律です。法律自体は新しいものではなく、1998年から施行されています。
最近なぜ話題になっているかというと、皆さんの経理業務に直接関わってくるような改正が2022年1月に行われたからです。
原:なるほど、では本日は経営者や個人事業主といった、私たちに直接関係しそうなことを中心に、教えてください。
居ケ内:はい、まず電子帳簿保存法は保存の区分として3つに分けられます。
皆さんが一番気にしなくてはならないのは3番目の「電子取引」です。
- 電子帳簿等保存
- スキャナ保存
- 電子取引
居ケ内:①②にも改正が入っているので一応お伝えすると、1つ目の「電子帳簿等保存」は、例えば決算書を作った時にできる「総勘定元帳」とかそういう元帳に関することなんですね。こちらは改正で保存に関する条件が緩和されただけなので、そんなに気にしなくて大丈夫です。
2つ目の「スキャナ保存」っていうのも同じく、条件が緩和されました。今までは領収書とかを紙ではなくスキャンしてデータ保存します、とする際に、あらかじめ税務署に届出をしなくてはならなかったのが、届出不要になりました。なのでそんなに重要視しなくて良いと思います。
それで本日の本題、皆さんに関わってくる重要視しなくてはいけないのが3つ目の「電子取引」です。
『電子取引』とは
原:『電子取引』というのは具体的にどんなことですか?
居ケ内:例えばAmazonで買い物をすると、請求書はPDF、つまり電子で届きますよね。それがこの電子帳簿保存法の「電子取引」に当たります。これを今までは印刷して紙で保管しておけば良かったんですが、これからはそれがNGになりました。
原:なんと。以前は請求関連の書類は、すべて紙に印刷して上司のハンコを押したものを経理に出すように、なんて言われている会社も多かったですよね。
居ケ内:そうですね。この法律、実は2022年の1月から始まって…いるはずだったんですけど、皆さん言ってすぐにはできないので、2023年12月末までの約2年間は猶予期間となっています。
原:では、今は猶予期間の最中なんですね。
居ケ内:はい、ですから2024年の1月以降は守っていないと法律違反になります。制度としてはもう始まっているので、早く対応していても問題はないですよ。
原:遅くとも2023年の年末までには準備しておかないといけないということですね。先ほどAmazonの例でしたが、基本的にはwebショップの買い物などが該当するんでしょうか?
居ケ内:買い物には限りません。お客様からメールで届いた請求書なども対象です。メールやPDFで届いた請求書や領収書は、印刷して保管していた会社が多いと思いますが、それもダメになりました。
濱内:要は、データで受領したものはデータのままでとっておかなければならないんですね。
居ケ内:そうですね!そして、ただデータでとっておけば良いというだけではなく、保存するための要件がちゃんとあります。その要件がちょっと難しいんです。
居ケ内:1つ目は『検索対応』。そのデータを金額や日付で検索できるようにしてくださいと。
2つ目は『データの改ざんができないようにする』。PDFなどの書類って簡単に改ざんができてしまいますよね。そこで改ざんされていないことを証明できるタイムスタンプを押してください、もしくはそれができない場合は訂正や削除の履歴が残るシステムにしてくださいよ。となっています。
原:タイムスタンプって、もちろん普通のハンコみたいなのとは違いますよね(笑)。どうやってつければ良いんですか?
居ケ内:タイムスタンプは総務省に認定された事業者が提供する専用のサービスを利用してつけます。請求書を送る側が押してくれると良いのですが、そうでなければ受けとった側が押さなくてはなりません。
原:わ、ちょっとハードルが高そうですね。
居ケ内:ですよね。それでタイムプタンプが付与できない場合は、保存に関する規定などを作って運用しなくてはならないということになっています。
改ざんされていないことを証明する方法
原:このシステムを使いなさい、みたいなのが決まっているわけではないんですよね?
居ケ内:必ずしもシステムを使わなくても良いのですが、いろいろな会社さんが電子帳簿保存法に対応したサービスを出してますので、そういったものを利用するのもありですね。
原:おすすめのシステムやサービスはありますか?
居ケ内:それが、わたしも仕事柄いろいろと使ってはみたんですが、今のところはコレ!というのはない印象です。いまはどのサービスも、書類データを取り込んだあと1枚1枚に、取引日や金額いくらと入力しないとダメなんですよ。もちろんそれを登録すると検索機能に対応しますし、改ざんできないように、という機能もついているんですけど..100枚あったら100枚分、入力しなければいけないんですよね。
個人事業の方とか、経理業務にそれほど時間をかけることができない小さな会社は大変だなと。
原:経理業務に、新たな作業が増える、ってことですね。
居ケ内:ですね、今はそういう状況です。が、制度開始までまだ時間があるので、各社がまだまだアップデートしてる途中って感じなんですね。2024年1月までには、もっといいのが出来上がってくると思うんです。
例えば、理想ってPDFのデータを登録した瞬間に、勝手に金額と取引が出てきてくれる…家計簿アプリのレシート入力みたいな状態だといいですよね。そういった機能がこれからどこまで進化するのか…?
居ケ内:なので私の考えとしては、今すぐ使うシステムを決めるんじゃなくて、ちょっと様子を見るのが良いのかなと。
ただそういうシステムがあるってこと、2024年1月からは始まるんだってこと、その2つを頭の片隅に入れておいて、やらなきゃダメなんだじゃあどこのシステム一番いいんだろうかっていうところを考えながら待つっていうのが一番いいんじゃないかなっていう風に思います。
濱内:私もちょっと電子帳簿保存法対応のクラウドサービスを触ってみたことはあるんですけど、おっしゃる通りまだ不便を感じる点が色々とありました。
例えばそのサービスで作成された請求書とかは勝手に入ってくるのでいいんですけど、それ以外の書類は、基本的にはすべての必要情報を改めて入力しなきゃいけない。これは面倒だなと思って、実は私もまだ保留中です。
居ケ内:ですよね。やっぱりAIとか機械学習とかでね、画像認識で自動入力してくれるそういうソフトも徐々に出てきてるみたいなので、手間ひまかけてひとつひとつ入力しなくても良いようになって欲しいですよね。
濱内:2023年中のどこかのタイミングまでには、この方法でやる!と決めなくてはいけないので、まずは情報をキャッチアップしていきましょうという感じですね。
無料で使える電帳法対応ストレージサービス「マネーフォワード クラウドBox」。電子書類の簡単アップロード、充実した検索機…
2022年1月から改正電子帳簿保存法が施行。freeeは電子帳簿保存法に完全対応、かんたんペーパーレスを実現!…
スマート証憑管理は、請求書・納品書・見積書などの証憑をクラウド上で保存・管理できるサービスです。…
まずやったほうが良いことはコレ
原:では、電子帳簿保存法に関してまずやったほうが良いことは「実務に使うための関連サービス/製品を含む情報収集」ですね。
居ケ内:あと実際に、ちょこちょこ色々なシステムを試してみるのもありだと思います。多くのサービスが無料で試用できるので。
濱内:急に「さぁシステムを導入するぞ!」というよりは、色々なサービスの無料版を触ってこんな感じなんだっていうのをまずは掴んでおいた上で、最終的に自分たちに良さそうなものを選ぶというのが一番じゃないかなと思いますよね。
原:ちなみに早く対応する分には問題ないということでしたが、本当のリミットとしては、2024年1月分のお金のやりとりから対応すればOKですか?
居ケ内:おっしゃる通りです。遅くとも2024年の1月1日分からは、電子でもらったデータはとりあえず電子のまま取っておかなければならなりません。なので、無料版とかお試しでいろいろとやるという準備は、ちゃんとそれより前にしておきましょうね(笑)
最新情報は○○で入手するのがおすすめ
原:電子帳簿保存法に関する最新情報を入手する、おすすめの方法があれば教えてください。
居ケ内:まずはYouTubeで『電子帳簿保存法』と調べて出てくる動画を観ると良いですよ。通勤時間などに、ながらで観たり聞いたりするだけでも情報を入れることはできます。
そして動画の中で気になったことを、税理士さんに質問しに行く、っていう使い方が良いと思いますね。
濱内:そうですよね、まったく分からないと質問もできないですもんね。
居ケ内:今って本当にいろんな税理士さんが動画をあげていて、10分前後でサクッと観れて、わかりやすく噛み砕いて説明されているものも多いので、まず取っ掛かりとしてYouTubeはおすすめです。
実は、我々もまずYouTubeで一旦他の税理士さんの見解などを聞いてから、改めて書籍等で勉強する、なんてこともよくやっているんですよ。
原:なるほど、概要をつかむという点でも動画の活用は良さそうですね。その次の段階として、もっと詳しく知りたい・個別に質問したいとなった場合、どうしたら良いですか?
居ケ内:税理士さんと顧問契約を結んでいない場合には、商工会議所に行ってみましょう。セミナーや無料相談とか全国色々なところでやってるんですよね。相談窓口を設けている市町村もあります。
濱内:まずは無料相談で聞いてみて、そこでやっぱり税理士契約が必要だなと思ってから検討してもいいんですね。
居ケ内:もちろんです。自分でできそうだなと思ったら、自分でやってもいいですしね。
2024年1月までにスタートできるようしっかりと準備を!
今回は税理士法人フューチャークリエイトの居ケ内さんにお話を伺い、電子帳簿保存法について教えていただきました。
従来の紙での保管に慣れている方には、電子化のハードルがやや高く感じられるかもしれませんが、電子帳簿保存法に対応することで、経理業務の効率化や帳簿の信頼性向上など、長期的なメリットも得られます。
インボイスの話題の影にひっそりと隠れているような?!電子帳簿保存法ですが、法律の猶予期間が終了する2024年1月までに、しっかりと準備をしておきましょう!
取材協力
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