【Domani】
2023.05.05
沖縄県で制定されている「慰霊の日」。沖縄県では学校や役所などの公的機関は休みになります。「慰霊の日」がどんな日なのか、制定された理由や関連行事など、日本人として知っておきたい基本的な知識をご紹介します。
Contents
沖縄の慰霊の日とは?
沖縄県民にとって、とてもなじみ深い休日である「慰霊の日」。それは、日本の戦争の歴史と深い関係があり、大切にしたい日の1つでもあります。
沖縄戦の犠牲者を追悼する日
6月23日の「慰霊の日」は、沖縄戦犠牲者の霊を慰め世界の恒久平和を願う日です。沖縄県が条例で記念日として定めました。沖縄戦は、太平洋戦争の末期である1945年に、日本軍と、沖縄諸島に上陸したアメリカ軍を主体とする連合国軍との間で行われた戦いです。
日本軍は沖縄を本土防衛の最後の拠点とし、連合国軍は日本本土に攻め入るための基地として、沖縄諸島を攻略しようと試みました。沖縄戦では、連合国軍と日本軍を合わせて20万人以上の犠牲者が出たといわれています。そのうち、一般の犠牲者は推計で約10万人です。沖縄県民の4人に1人が命を落とした壮絶な戦いで、甚大な被害がありました。
慰霊の日・6月23日は沖縄のみ休日に
沖縄県は「慰霊の日」の6月23日が休日になります。日本の休日ではなく、沖縄県独自の休日であることに疑問を抱くかもしれませんが、これには歴史的背景が深く関わっています。
第二次世界大戦で敗れた日本は、連合国軍の占領下に置かれることになりました。その後、1952年のサンフランシスコ講和条約によって日本の主権は承認されましたが、沖縄県だけは引き続きアメリカの統治下に置かれました。そのため、日本の休日とは別に沖縄県独自の休日が定められたのです。
1972年に沖縄返還が行われると、沖縄県にも日本の法律が適用されるようになりました。「慰霊の日」は日本の休日ではないため除外されましたが、沖縄県の条例により、沖縄県独自の休日として今も残り続けています。
慰霊の日の由来は?
なぜ6月23日が「慰霊の日」なのでしょうか。その由来についてご紹介します。
沖縄での組織的戦闘が終結したことに由来
「慰霊の日」は、アメリカ軍が主体となった連合国軍と日本軍との間で起こった組織的な戦闘が終わった日とされています。1945年6月23日に、沖縄現地に配備された日本軍の牛島満司令官と長勇参謀長が自決し、組織的な戦闘が終結したことから、この日が「慰霊の日」に定められました。
当初は6月22日に制定
「慰霊の日」が定められた当初は、6月22日でした。沖縄戦が終わるきっかけとなった日本軍の牛島満司令官と長勇参謀長が自決した日は6月22日だと考えられていたからです。
しかし最初の制定から4年を経て再調査を行ったところ、牛島満司令官と長勇参謀長が自決した日は、22日ではなく23日である可能性が高くなりました。そこで「慰霊の日」の日付も6月23日に変更されたのです。
慰霊の日に関する行事と開催場所
「慰霊の日」には、沖縄戦の犠牲者を偲び、追悼式や前夜祭が行われています。関連行事や開催場所についてご紹介します。
「慰霊の日」に関する行事
毎年6月23日には、沖縄県知事、総理大臣や衆議院・参議院議長などが参列する「沖縄全戦没者追悼式」が行われます。開催場所は、沖縄県糸満市にある「平和祈念公園」で、沖縄戦で亡くなられた方々のご冥福と世界の恒久平和を祈願します。
当日は、糸満市役所から平和記念公園まで沖縄戦で激しく争われた南部エリアを歩きながら慰霊する「平和祈願慰霊大行進」という行事もあります。
沖縄県全域では、正午の時報とともに黙祷を捧げるのが習わしです。
また、「慰霊の日」の前日にあたる6月22日には、前夜祭が開催されます。開催場所は、平和祈念公園内の「沖縄平和祈念堂」です。平和の鐘の献鐘、琉球古典音楽の献奏、琉球舞踏の奉納などで戦没者を追悼します。
参考:総務省|一般戦災死没者の追悼|沖縄全戦没者追悼式
参考:沖縄平和祈念堂へ|公益財団法人沖縄協会の公式ホームページ
メイン会場となる平和祈念公園とは?
平和祈念公園は、沖縄戦終焉の地である糸満市摩文仁の丘陵を南に望み、海岸線を眺望できる高台にあります。
公園の中には、沖縄戦の写真や遺品などを展示した「平和祈念資料館」や、沖縄戦で亡くなられた方々の名前を刻んだ「平和の礎(いしじ)」、沖縄戦最初の米軍上陸地の阿嘉島・被爆地広島・被爆地長崎の火を合わせた「平和の火」、平和祈念像が安置されている「平和祈念堂」、戦没者の遺骨が埋葬された「国立沖縄戦没者墓苑」などがあります。
平和祈念公園は慰霊団や修学旅行生、国内外の観光客がたくさん訪れる聖地であり、休日には家族連れなど地元の人たちで賑わうクリエーションの場としても利用されています。
参考:沖縄県営平和祈念公園
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監修/和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。
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