【日経新聞】
2023年5月29日
日銀が29日発表した2022年度決算によると、日銀が保有する国債の時価が簿価を下回り、3月末時点で1571億円の評価損となった。評価損は06年3月末以来17年ぶり。長期金利の上昇で国債の時価が下落したことが響いた。
国債の残高は約581兆7206億円だった。日銀は国債を満期保有することを前提としているため、時価が下落しても目先の収益が悪化することはない。ただ、評価損の拡大で市場が日銀の財務状況を不安視すれば為替や金利に影響を及ぼすとの見方がある。
評価損は一時期より減少したもようだ。日銀の黒田東彦前総裁は2月の国会答弁で、保有する国債の評価損が22年12月末時点で約8.8兆円になったとの試算を明らかにしていた。
当時は長期金利の変動許容幅を0.5%程度に引き上げた影響で金利が上昇していた。23年3月になると、米欧の金融不安などを背景に長期金利が低下した。結果として12月時点より国債の評価損が縮小した。
決算は好調だった。22年度の経常利益は3兆2307億円と前の年度に比べて8121億円増え、改正日銀法が施行された1998年度以降の最高を2年連続で更新した。保有する上場投資信託(ETF)の運用益や国債の利息収入が増えた。
企業の最終利益にあたる剰余金は2兆875億円で過去最高となった。剰余金から法定準備金と配当金を差し引く国庫納付金も過去最高の1兆9831億円となり、21年度(1兆2583億円)より6割増えた。1兆円を超えるのは4年連続。