スティーブ・ジョブズは、ありとあらゆる名言を残しました。しかし、もっとも本質を突いていたのは、1984年に応じたインタビューでの発言かもしれません。

当時『タイム』誌の特派員だったマイク・モリッツにジョブスが語ったことこそ、成功する人物を示すもっとも重要な指標と言えるでしょう。

ジョブズは、モリッツに以下のように語りました。

物事は、間違い(mistake)を繰り返していくうちに磨き上げられていきます。私には、間違いを繰り返すチャンスが何度もありました。「感性」は間違いを重ねていくうちに養われていくのです。

ぱっと聞いただけでは、ジョブズが成功について語っているとは思えないでしょう。成功というよりは、「間違い」について語っているように聞こえます。

しかし、間違いをチャンスとみなすジョブズの姿勢は、リーダーなら誰でも参考にできる教訓でしょう。

改善を積み重ねていくことに「間違い」はつきもの

間違いをすることがチャンスだと考える人はほとんどいません。チャンスと言えば、何かをつくったり、業績をあげたり、適切なタイミングで適切な機会に巡り合ったりするときに使う表現だと思われるでしょう。

ところがジョブズは、「間違いを何度も繰り返すチャンスがあった」と語っています。ジョブズにとっては、間違いは価値あることだったのです。

ほぼすべての企業と製品にとって、成功とは「1つの出来事」ではなく、「1つのプロセス」として生じます。長期にわたって改良を積み重ねていくことに伴って、成功が得られるのです。そしてジョブズに言わせれば、そのように改良を積み重ねることには、間違いがつきものだということ

成功はプロセスだという理由は、少し考えてみれば容易に推察できるでしょう。何かに挑戦するたびに、効果があることと、効果がないことの違いを学びます。

そうして時を重ね、何度も何度も挑戦していくうちに、そこまでのプロセスで積み重ねてきた改善のなかに、成功が隠れていることに気がつくのです。

間違いをチャンスだと捉えるのが成功の鍵

とはいえほとんどの人は、間違いをすると失敗したような気持ちになり、失敗はすべての終わりだと感じます。挑戦してうまくいかなければ、何もかも終わりだと感じるわけです。努力したけれど、うまくいかなかったのだ、と。

しかし、挑戦の過程で間違いをいっさいせずに偉業を成し遂げた人など、1人も存在しません。成功した人は、間違いをしても、それを失敗としてではなく、チャンスだととらえています。それこそ、ジョブズが伝えたかったメッセージだと思います。

さらにジョブスは優れた結果を出す秘訣について、次のように述べました。

何かをつくろうとするとき、エネルギーを余分に投じなければ優れた結果は出せない、ということはありません。お金が余分に必要になることも滅多にないでしょう。

必要なのは、ほんの少し時間をかけることです。それほど多くは要りません。「少し時間をかけよう」「優れた結果を出すまで諦めずにがんばろう」という意欲があれば十分です。

「間違い」と「失敗」を同等にみなさない

取り組むべき価値のある事柄には、ほぼ間違いなく、進もうとする道を阻む障害が現れます。そのせいで、ほとんどの人は諦め、自分は失敗したと思ってしまいます。しかし実際に、「失敗」することはほとんどありません

多くの人にとって何よりも困難なのは、間違いをする可能性を受け入れること。間違いと失敗を同等にみなす姿勢のままだと、何かに挑戦することが大きく減ってしまいます。

挑戦しなくなれば、何かをつくり出すことはできません。それこそが、何よりも大きな間違いです。

間違いを重ねていくと、うまくいく方法と、うまくいかない方法の違いがはっきりしはじめます。それと同時に、うまくいかない方法がわかったときの感情を、身をもって痛感するでしょう。

しかし、時間とともに、うまくいかないときに湧いてくるその感情に対する恐怖心が薄れ、挑戦し続けるための自信とモチベーションが生まれてきます。

人の成功を阻むものは、得てして間違いをしたときや、うまくいかないときに諦めてしまう姿勢です。すべてを断念してしまうことこそが成功への道を塞いでしまうのです。

ジョブズに言わせれば、成功する人間は、間違いをしてもそれを失敗だとは考えません。間違いを何度も重ねたとしても、止まることなく突き進み、うまくいく方法が見つかるまで諦めないのです。


間違いは避けて通れないものであり、間違いをしたときにどう対処するかこそが、成功するか否かを決定づける要因。

どんなことに取り組んでいようとも、成功する人は間違いを受け入れ、改良を重ねて「真に優れたもの」を生み出そうとするとジョブズは伝えたかったのでしょう。

Source: Put Something Back Steve’s driving motivation

Originally published by Inc.[原文]

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