【gendai】
2023.07.01
前回、港湾の役割や変遷をご紹介しましたが、続いてはさまざまな船、とりわけ新たな試みに挑戦しているものをご紹介します。
経済性の観点から、風力など自然エネルギーを利用する船は、主流の座を動力船に譲りましたが、昨今、再びその力を利用しようとする動きが見られます。池田良穂さんいよる『最新図解 船の科学』から見てみましょう。
![【書影】最新図解 船の科学](https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/c/e/2048m/img_ce5bd0467fface56691dc486df5039af181706.jpg)
*本記事はブルーバックス『最新図鑑 船の科学』から、内容を再構成してお送りします。
社会環境の変化が起こるたびに注目が集まる
これまでの長い船の歴史の中でさまざまな船が登場して、ある船は消えて、ある船は生き残った。また、一度は消え去ったが社会環境が変化して再び復活した船もある。そのような船を幾種類か紹介しておきたい。
経済性を重んずる客船や貨物船の世界では、動力船によって、ほぼ駆逐された風力を利用する船舶だが、社会環境の変化によって何度か復活の兆しをみせている。まず1970年代のオイルショック後の燃料油価格の高騰にともない、各種の帆装貨物船が開発された。
かつて貨物船では50人余りの乗組員が乗っていたが省人化によって乗組員の数が少なくなり、従来の帆船のように多くのマストにたくさんの布製の帆を張ることは難しいため、自動的に帆を張ることができ、かつ風力を最大限に船の推力として活用するための帆の自動制御も必要とされた。このため布製ではなく、飛行機の翼のような硬い材質の帆が開発され、「新愛徳丸」をはじめとして十数隻の貨物船に装着された。
![【写真】進水を迎えた「新愛徳丸」](https://gendai-m.ismcdn.jp/mwimgs/8/1/2048m/img_814e3a0bbb88777b02e9ac653b183e0a105619.jpg)
しかし、1990年代になって原油価格が安定するとブームは去り、帆装貨物船は姿を消した。帆装の初期投資とメンテナンスコストが、燃料費の削減に見合わなくなったためである。
2000年代になって再び風力の利用に注目が集まった。それは原油価格の高騰だけでなく、地球環境保全のためにも自然エネルギーの活用が必要とされたためである。原油価格はシェールオイルの開発によってある程度下がったものの、2022年に起こったロシアのウクライナ侵攻によって再び高騰し、その後も激しい価格変動が続いている。
また、地球温暖化に対応するためにCO₂をはじめとする温室効果ガス削減の流れは世界的な潮流となり、再生可能エネルギーとされる自然エネルギーの利用が必須の時代となった。
そうした中での試みの一つが、100年近い眠りから覚めたローター船の復活である。